「河口堰も木曽川導水路も、血税の無駄使い公共事業にすぎない」
武藤 仁(「長良川に徳山ダムの水はいらない市民学習会」事務局長)



長良川市民学習会の武藤です。それでは河口堰、木曽川導水路、無駄な公共事業という3つのキーワードで、お話を進めていきたいと思います。長良川河口堰から今日にいたる状況について少しみてみたいと思います。

68年、木曽川水系水資源開発基本計画というのができ木曽川水系、木曾三川の水資源開発計画ができました。フルプランというものです。ここで長良川河口堰は法律的に位置付けられます。そして73年、ここで全部変更されまして徳山ダム計画が造られます。73年3月というのはオイルショックの年です。これから日本の経済は伸びませんでした。ですからこの経済が伸びない時に、この木曽川水系では逆に全部見直しによって、ダムについてはアクセルを踏んでしまったということになりました。

そして88年、長良川河口堰は工事着工し、95年には運用が開始されました。2000年に徳山ダムも本体着工がされてしまいました。466世帯という徳山村の全村民が移転して、このような悲劇的な状況になりました。

2007年にはここから水を引くということで導水路計画が出され、その中で一部を長良川に流すという計画案が出ました。私たちは岐阜を中心に「こんなバカな計画があるか」ということで立ち上がりました。そしてその間、愛知県でも導水路はいらないという住民運動も起きました。

今年5月、名古屋市長が導水路撤退宣言をし、10月には国土交通大臣のダム及び導水路凍結のコメントが出ました。ここまで至る間にこのような経過があるわけです。

この木曽川水系には、基本的にはこの岩屋ダム、犬山頭首工、これができて木曽川水系はほぼ水が満たされました。その後に長良川河口堰という全くいらないものが造られました。そしてその後に徳山ダムという、更にいらないダムが造られました。この二つの無駄を重ねて、今度は木曽川水系連絡導水路という全く無駄に無駄を重ねる計画で直径約4メーター、43キロメートルの導水管ができます。一番許されないのは、ちょっと住民エゴですけれど、私たちの愛する長良川にこのダムの水を流すということで、私たちは怒っています。2015年、890億円で完成するということになっております。

この導水路というのは、この濃尾平野の外円、この濃尾平野の北の山にぶち当たる所をずっとつながっています。西平ダムという戦前にできた電力ダムに徳山ダムから流して溜まった水を犬山の方に届ける道だということです。ここで長良川に途中で落とし木曽川にまた戻すという、わけのわからない複雑な構想です。これ長良川です。これ金華山、この山側のところを導水路が通るのです。そして、こともあろうにこの鵜飼場、この放水するところは、これ御漁場なのです。天皇、皇室の使う御漁場のところに畏れ多くも流すのです。そんな馬鹿げた計画です。

この水がどこへ行くかといいますと、一つはシジミを生かすため、(長良川でシジミを殺した建設省が木曽川でシジミを助けるためにここでやるというのです。)もう一つは、名古屋市の工業用水のために流すということで、下流に流れまして木曽川と長良川がくっつく背割り堤のところで長良川にいったん流した水を木曽川に戻すという計画です。徳山ダムとの関係では、徳山ダムの水を流す導水路です。

徳山ダムからこのように利水として名古屋市の水道、そして工業用水、愛知県の上水、この三つについての利水目的です。そしてこともあろうに、名古屋市の工業用水をわざわざ長良川に流してこういうふうにやる。これは常時流すということになっているんです。もうひとつ渇水の時にこのように流すということです。 

渇水というと皆さんは、この渇水の時に蛇口から出るための水と思っているかもしれません。違います。この渇水対策容量というのは世にも不思議な、10年に一回というふうに、ダムは普通渇水のために造られているんですが、それ以上の渇水の時にシジミやアユを助けるための渇水容量なのです。ですから、環境ということで流す、そういう導水路です。

私たちは怒りました。怒りましたら、常時はこっちへ工業用水を流すかなという妥協案を出したり、いろいろ国は揺れています。本当に水はいるのか。代表的な名古屋でやります。この赤い線が1日最大給水量です。このバックにあるのが、ダムを造ってどれだけ水利権をとったかということです。

これを見るとわかりますように、123万トンを1975年に記録して以来ずっと下がっています。100万トンくらいになっています。今年(09年)は、梅雨がそのまま終わっちゃったという感じで公式は発表していませんが、多分100万トンを割るだろうと思われます。この100万トンを割るということは、私は1972年に水道局に就職したんですけれど、それよりも前の時代に下がっちゃってる。ですから水需要はものすごく落ちています。名古屋市は人口が増えています。しかし、水需要はこれほど減っているということで、絶対これから水はいりません。

なのに水利権は、徳山ダムまで入れると184万トンです。1.8倍の水利権を持ってるんです。だぶついています。これを全体に見ます。名古屋市上水から愛知県の工業用水、岐阜県の工業用水まで一つにくっつきます。水利権というのはダムにいくら金を払うかということによってできています。名古屋市は、明治の時代にすでに御百姓さんと話をつけて、既得水利権を協議で取りました。そして愛知用水、次に岩屋ダムです。もうこれで、はじめに言いましたように木曽川水系はできました。

そして一番問題な長良川河口堰。これは全く水余りです。要りません。そして日本で一番大きい徳山ダムというのを造りましたけど、水利権的にはほんのちょっぴりです。ところがこれは結果でして、この長良川河口堰ができる時に何が起こったかというと、三重県工業用水は全く要りませんから、長良川河口堰着工ができなかったんです。これではいかんということで、愛知県が2トン買いましょうと。そして過去にさかのぼって、名古屋市や愛知県が岩屋ダムの余っている水を買ってあげましょうと。そして政治決着がついて、河口堰は遅れに遅れて着工することになりました。

徳山ダムはどうか、徳山ダムができる時に一部着工できずに、名古屋市は3トン要りません。3トンというとどんなものかわからないかもしれませんが、これから私がお話する中で、1トンといったら20万人の水道局の水ができると思って下さい。ですから名古屋市は、徳山ダムを造ろうといった時に、60万人分の水利権は要らないということになりました。それからいよいよ徳山ダムが完成するぞという時に、水資源開発機構などは2540億円から3500億円に値上げすると言いました。そしたら俺も要らない俺も要らないということで、各都市用水は水利権をほぼ半分返上してしまいました。しかしこの時代になるとこれを得ようという都市、事業体はありません。

要するにこの水資源開発は完全に破綻してしまったわけです。この破綻がどうなるか。長良川河口堰の愛知県の上水、これは知多半島の住民に無理やり押し付けました。岐阜県はほとんど浄水場というのがありません。特に大垣、岐阜は地下水が豊かにあります。愛知県も非常に豊かで浄水場に活性炭とか入れる所はありません。ところがこの知多半島の浄水場だけは違う。活性炭を入れざるを得ないくらい水質がひどいです。今まで木曽川の水で安全だったのがこうなってしまったのです。

名古屋ですが毎秒2トンの水利権を取っています。96年から使えるのですが、導水路も造っていません。ただ毎年6億6千万円の金をこの長良川河口堰に払っています。維持管理費も毎年払っています。そういう無駄をやっています。

三重県です。三重県の水道、中勢、津の方ですけど、津の方ははじめフルプランに入っていませんでした。河口堰ができたということで無理やり水を押し付けられました。高い水を飲まされているわけです。北勢地方が長良川河口堰から取っていることになっていましたが、これ実は中日新聞がすっぱ抜きましたが、河口堰から取っていなかったんです。木曽川から取っていたんです。三重県は言いました。「だってスクープされたいもん。」建設省も知っているはず。建設省は注意するというだけでまだ終わっていません。ですからこれはでたらめな状態になっています。

工業用水はもっとひどいことになっています。三重県の工業用水は、さっきも言ったように全然お客さんがありません。建設費355億円はすべて一般会計、県民の税金でやることになってしまいました。愛知県、愛知県も同じです。500億円、このお金どこへいったかというと、一般会計から買います。返すあての無いところへ貸すということは、やったのといっしょなんです。裁判が起きたのです。しかし裁判長は、「要らないとはいえない、いつか要る時が来るかもしれない」という判決で、原告が負けてしまいました。ところがその判決が終わった1年後、愛知県は何をやったかというと、ちゃっかりこの5.5トン、愛知県民の水道料金に引っかかるように水利権が移転しちゃったんです。ですから使わない工業用水はみんな水道料金や税金の方に移ってしまったと思って頂いていい。

徳山ダムはどうか。徳山ダムはたとえば名古屋市に毎秒5トン、100万人分の水道をつくろうということで参加しました。さすがに着工時にこれは大きすぎるということで、3トン撤退しました。その後、徳山ダムが完成間近になって3500億円になるということを水資源機構が言い出しましたので、みんな要らないということでこの棒グラフのように減っちゃったわけです。最終的には15トンで計画されたこのダムは6.6トンでしたが、普通150世帯入るマンションに66世帯しかお客さんが入らなかったら、建設業者は止めると思います。公共事業は止めないのです。形も大きさも全く変えなかった。こういう無駄があります。


ですからその減った分をどうするか、それは環境対策、さっき言った渇水対策だと言いました。もう一つ要らない水は、導水路へ流すということで、導水路へ流されます。ヤマトシジミやアユは水道料金を払うことができませんので、税金で皆さんに払ってもらいながら導水路に流すんです。これが私たちの愛する長良川に流れてゆくのです。岐阜県は全く使うあてはありません。はじめから税金の無駄遣いなんです。これは古田岐阜県知事ですけど、23年間23億円、592億円払わないかん。水道や工業用水は完成してから23年間のローンで払います。いよいよこれ運用になってから「さあ困った誰に払ってもらおう」という記者会見、全く馬鹿げたことです。

治水について、洪水対策についてはダムを造っている間にお金を払っていきます。岐阜県はすでに400億円以上の金を払っています。ですからこの貧乏県の岐阜県は、いままで500億円の金を借金で払っていますから、それを返済しなければならない。これから徳山ダムができて、これから23億円を23年間払う、こういう馬鹿げたことになっています。全く工業用水、上水、使うあてはありません。水資源開発のためではなくいつの間にか治水になっちゃうというのは、この徳山ダムの状況です。なぜそうしたかというと、水道料金では回収できないから、税金で皆さんから薄く広く取ろうということです。ダムは一緒だったのですけど、このように建設費は大きくなってしまいました。

これはどういう負担がくるかということをみますと、長良川河口堰というと23年間このように払います。そして徳山ダム。このようにダムの建設費というのは、完成してから23年間なり、それ以上に金を返していきます。問題なのは、水道料金として皆さんにくるのは、完成してから減価償却という形で、55年間にずっと渡ってくるわけですから、私の子ども、孫のところまでこのダムの問題は負担になるというふうに考えていいと思います。木曽川水系連絡導水路、ほとんど治水目的、治水というのはさっきも言ったシジミとアユのためということです。このように水道でも3分の1が国庫負担、補助がありますから、税金の無駄遣いもいいところです。

木曽川水系連絡導水路、これはまだ完成していません。しかしもう建設費は払い始めています。私たちが反対したことによって、去年(08年)着工できませんでした。14億円をみておりましたけれど、10億円使えませんでした。これを繰り越します。今年度さらに10億円に上ろうとした時に、今度の選挙で名古屋市長が変わりました。それで名古屋市長はもう払わないと言ったのが、撤退の記事なのです。おまけに徳山ダムの維持管理費も払わないと、できちゃった段階で払わないという、これは言い過ぎであって撤回しましたけれど。河村市長はこれで撤退しようとした。

今、国交大臣が凍結するコメントで、私たちは来年度なんとかこの金を止めたい、そして永久に中止させたいと思っています。ダムは建設だけが問題ではありません。ダムは、今日見に行かれた方もあると思いますが、長良川河口堰も毎年このように10億円は維持管理費としてかかるんです。これは、永遠にダムに参加した自治体が金を払わなければなりません。徳山ダムも完成してしまいました。これから10何億円という形で、毎年永遠にダムが撤去されるまで、これを払わなければなりません。岐阜県で言えば、3億2千万、そして今年度21年度で言えば、4億3千万払わなければならない。こういう馬鹿げたことになっています。

私たち長良川市民学習会がなぜこんなに怒ったかというと、はっきり言って私たちの会は、導水路反対の運動ではありませんでした。「長良川を愛しているから、長良川にダムの水を流してくれるな」、そういう住民運動でした。なぜ長良川へ流すのかまったくわからないということでした。

そしてこの導水路の勉強で、私たちはまさに市民学習会ですけれど、学習運動をすることによってやっとわかってきました。この上流一通案で国と3県が一致したのは、この下流の背割り堤のところに施設を造るために、これをやったわけです。下流施設を造ることによって、長良川に流すという根拠ができるわけです。下流施設を造ることによって、今まで使えなかった長良川河口堰、亡霊の長良川河口堰のあの水を、もう一回使ってやろうというすごいねらいがあったわけです。

この導水路問題は、税金の無駄だけじゃなくて、この長良川河口堰をもう一回復活させようという、非常に危険な構想です。引き続き私たちは、これを凍結ということになりますけど、凍結は電子レンジでチンとすればまた復活しちゃいますから、それは絶対白紙。それから河川整備計画も変えていきたいと思います。河川整備計画は、木曽川水系について言えばひどい河川整備計画でして、ぜひ計画を変更させたいと、これから見守っていきたいと思います。どうもありがとうございました。