黒部川ダム排砂見直しを求めて共同声明を提出する
 黒部川ウオッチング・富山ネットワーク代表
 金谷 敏行


日本一の清流と呼ばれた富山県黒部川では排砂ゲートを使ったダム排砂の実験が繰り返されており、排砂による深刻な漁業被害が続き沿岸の漁獲量が激減している。今年6月12日には刺し網漁やわかめ栽培の漁民17名が排砂の差し止めと今までの被害に対して漁業補償を求め、富山県の公害審査会に調停の申し立てを行った。

調停申請中にもかかわらず、国土交通省と関西電力は6月19日に黒部川出し平ダムと宇奈月ダムの連携排砂を強行した。続いて、7月1日に洪水で新たに貯まった土砂を来年まで持ち越さないという名目での排砂−通砂も行われた。黒部川の濁りは水量の多かった通砂の方がひどく、完成したばかりの宇奈月ダムには出し平ダムからのヘドロが多いところでは30cm以上堆積していた。国土交通省や関西電力は、自然状態に限りなく近い方法をとっているので問題がないといってきたが、現場を見れば川や海の変化に誰しも驚くような光景が続いていた。

排砂・通砂期間中、漁業被害を訴えてきた刺し網部会の漁民は宇奈月ダムで抗議の監視活動を行うとともに、金沢大学田崎先生の研究チームとともに環境破壊を実証するためのサンプリング調査を徹夜で行った。これには、地元の住民グループ「黒部川・富山湾を考える会」の人々も加わった。

私たちはこのような状況の中で、県内はもとより全国の人々に今後の排砂の見直しを求める共同声明を呼びかけ、7月16日に国土交通省と関西電力に提出した。共同声明は、国土交通省と関西電力に対し次の3項目の要請内容になっている。1.出し平ダムと宇奈月ダムの連携排砂を中止し、排砂ゲートの運用を見直すことを求めます。2.黒部川の協議機関(土砂管理協議会・排砂評価委員会)のあり方を見直し、メンバーに被害漁民と漁民の推薦する専門家を加えてください。その上で、全員の合意なしに排砂を行わないようにしてください3.県の公害審査会では関係文書・物件の提出、検査・調査に対する迅速な協力を行い、調停成立に向けた真摯な対応を求めます。

今回の共同声明には、国会議員のほか富山県の県会議員が超党派で6人賛同し、県内の多様な市民グループの中心メンバーの方々が声を上げた。また、「公共事業のチェックを求めるNGOの会」「水源開発問題全国連絡会」などダム問題に取り組む全国組織や関西電力への意見株主運動を進めてこられた方など全国の人々にも支援を得て、13団体・158個人の連名で提出することになった。

富山県でこのような広がりを持ってダムのあり方を問う声明が提出されたのは初めてのことであり、黒部川の排砂問題は全国の人々にも注目されることとなった。今年、10月27〜28日には「水源開発問題全国連絡会」の総会と合わせて、現地で全国集会も予定している。

排砂は今回で終わるわけではない。次の排砂はさせない。通砂もさせない。ダムから汚れた土砂は下流に流させない。そうした取り組みを進めていく必要がある。その意味では、今回の共同声明はSTOP連携排砂に向けた大きな一歩となった。


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