【ストップ!ヒンクルート&ボーノック】 2001.12.7

<第2号 地元議会の反対の声>


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日本の企業と政府機関が、現地の議会や地域住民を無視して進めているタイの
石炭火力発電所計画を止めるため、皆さんの力を貸して下さい!
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from メコン・ウォッチ&地球の友ジャパン
(詳しくは http:/www.jca.apc.org/mekongwatch )

日本企業三社(トーメン、豊田通商、中部電力)が投資し、国際協力銀行
(JBIC)が融資を前向きに検討しているヒンクルート石炭火力発電所について
は、最も漁業被害を受けるバーンクルート市(タイ語でテーサバーン)の市議
会が反対をしています。

この発電所計画の是非を争点に行われた市議会議員選挙で当選した12人のうち
11人が計画反対派でした。以下は、そのバーンクルート市議会が2001年4月
に、国際協力銀行総裁とトーメンに宛てて送った手紙です。これを読むと、現
地の人たちがこの計画の問題点をどう考えているかがよくわかります。

しかしながら、JBICとトーメンのどちらからも返事は来ていないそうです。日
本政府も企業も、問題が起きれば責任(responsibility)を回避しようとする
し、問題を回避するために受け答えをすることすら(responsive)しないので
す。以下、英語の原文を東大大学院生の名村隆行さんが翻訳して下さいまし
た。

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バーンクルート市議会
バンサパーン郡、プラチュアップキリカン県、タイ国

2001年4月9日

国際協力銀行(JBIC)総裁宛

UPDC社によるタイの石炭火力発電プロジェクト計画を支援しないでください

総裁殿

我々は、タイのプラチュアップキリカン県バンサパーン郡トンチャイ村に石炭
火力発電所を計画しているユニオン電力開発社(UPDC)が、JBICにプロジェク
トへの融資を申請していることを知りました。バーンクルート住民を代表する
バーンクルート市議会のメンバーとして、我々は、JBICがプロジェクトを支援
しないよう強く要求いたします。

プロジェクト予定地は、トンチャイ村のはずれにある人口の少ない場所です。
しかし、人口の多いバーンクルート市に近接しているため、バーンクルート市
もヒンクルートプロジェクトの影響を受けることになります。したがって、プ
ロジェクトの操業権を付与する法的な権限はトンチャイ村議会にあるものの、
バーンクルート市もこの事業のプロセスに参加する正当性を有しております。

現在のバーンクルート市議会は、1999年の11月に選挙が行われました。その結
果、12の議席のうち、11人がバーンクルートの環境グループから選出されまし
た。この選挙での環境グループの主張はただひとつ、「石炭火力発電所反対」
ということだけです。トンチャイ村議会は1997年の7月にプロジェクトを承認
いたしました。しかし、議会に渡された環境影響評価報告書は英文で書かれて
おり、誰もそれを読むことができなかったにもかかわらずに決議が行われまし
た。その上、このEIAが環境影響評価を承認する機関である環境政策・計画局
(OEPP)による承認を受けたのは、10か月も後の1998年5月のことでした。し
かし、トンチャイ村議会は事務所の前に集まった何百人ものバーンクルート
市・トンチャイ村の住民の要求を受け、1997年11月に承認を取り下げておりま
す。

1997年、バーンクルートの住民たちは、バーンクルート環境グループを結成
し、それ以来プロジェクトのモニタリングを行なっております。現在も進めら
れている分析は、多くの失敗や不適切なプロセスを明らかにしました。それ
は、環境影響評価報告書の誤った情報、住民参加のない環境影響評価の承認、
でっちあげられた公聴会、土地の買収をめぐる汚職、といったようなことで
す。プロジェクト計画は、住民の間での暴力事件を含めた大規模な地域社会の
分断を引き起こしました。地域住民はこのプロジェクトのプロセスを通じて不
審を抱き、プロジェクト推進者や関連した行政機関を信用しなくなりました。
地域住民はこのプロジェクトに対して、以下に述べることに焦点を絞って反対
し続けることを決意しています。

●環境影響評価
このプロジェクトは住民と協議することなく計画されており、タイ政府の「開
発」の進め方が、多くの地域で人々に慢性的な問題を引き起こしていることを
表すひとつの例であります。住民がこのプロジェクトについて知ったときに
は、すでにUPDC社とタイ発電公社との間で売電契約が結ばれていました。1998
年には、環境グループは環境政策・計画局に環境影響評価報告書のコピーを請
求したところ、利用可能な報告書は英文で書かれたものしかないとの回答を得
ました。何か月か経った後、ようやく環境グループがタイ語版の報告書を手に
入れたとき、この報告書に間違った情報があることを発見しました。特に、報
告書では、プロジェクトサイトから500メートル沖合にある珊瑚礁を単なる岩
だと認識しております。環境影響評価によると、この場所は建設の時に出る廃
棄物を投棄する場所であるとされております。国家的なスキャンダルの結果、
タイ政府は環境影響評価を行なうコンサルタント会社のライセンスを停止し、
UPDC社に対して環境影響評価の補足調査を行なうよう指示しました。しかし、
この補足的な環境影響評価でも未だ住民参加がなく、いくつかの欠点を抱えて
おります。

補足的な環境影響評価では、海洋の生物多様性の調査に2ヶ月しかかけておら
ず、プロジェクトの影響を評価するのは困難であります。環境影響評価では
164種の海洋生物しか確認しておりませんが、漁業局のChawalit Wittayanon博
士率いる調査チームは、1999年の4月から8月までの間に470種を確認しまし
た。環境影響評価によると、バーンクルートでは99世帯が漁業を営み、100艘
の船しかないと報告されています。しかし実際には、500世帯が漁業と関連し
た生活を営んでおり、船も300艘に達しております。これには、バーンクルー
トの沖合で近隣から漁業をしにきている船は含まれておりません。以前、珊瑚
礁に予定されていた建設廃棄物の投棄地は、他の漁場に移動したものの、ここ
は貝や甲殻類、イカ、大型の魚類がいる海洋生物の豊富な場所です。環境影響
評価は、廃棄物の投棄による影響を考慮しておりません。プロジェクト推進者
は首尾一貫して、プロジェクトは地域住民に利益しかもたらさないと述べてお
ります。しかし、補足的な環境影響評価で示されている、漁業への影響を緩和
するための養魚プログラムは、複雑な食物連鎖のなかで生きている164種(実
際には470種)と引き替えに、たった7種の海洋生物を養殖することを提案して
おります。

EIAが、上記のプロジェクトの諸影響について対処どころか認識すらしていな
いことは、地域住民には受け入れがたいことです。バーンクルート環境グルー
プは、多くの機会を通じて環境政策・計画事務局に関心を持ってもらうよう働
きかけてきました。しかし環境政策・計画事務局は地域住民の声に耳を傾け
ず、専門家チームによる非公開のコメントに基づいてEIAを承認したのです。

●違法な公聴会に対する地域住民のボイコット
1997年以来、地域住民は公聴会を開いて欲しいこと、そして公聴会が開かれる
までプロジェクトを中止して欲しいということを要求しました。政府はこの要
求を無視し、すでに公聴会のプロセスは終了したと言及しております。このよ
うに、政府はプロジェクトを進めることを認めており、UPDC社は、湾岸局から
埠頭の建設許可を、そして工業局からは工場の操業許可をもらい、また環境影
響評価が承認され、プロジェクトサイトの造成許可が与えられております。こ
のように、国会を含めた政府や中央・地方を含めた行政機関は、反対している
地域住民からの30通以上もの請願書を無視、却下しており、我々は返事を受け
取ったことがありません。

1998年12月に、県に計画を提出し、国際協力銀行からの融資も申請することが
予想されているガルフパワー社による石炭火力発電所プロジェクトに反対して
いる人々も含め、何千もの地域住民が集まり、プラチュアップキリカン県のボ
ーノックにある高速道路を封鎖し、ふたつのプロジェクトの中止を要求しまし
た。政府は機動隊に、暴力を使って民衆を排除するよう命令しました。この痛
ましい事件での民衆の上げた叫びがきっかけとなり、政府は各プロジェクトに
対して公聴会を開くよう指示しました。

しかし公聴会は単なる形式的なものでした。なぜならプロジェクトはすでに環
境影響評価が承認され、関連行政機関の許可を得ているためです。その上、両
公聴会の議長は、国家経済社会開発委員会(NESDB)の元事務局長で、プラチ
ュアップキリカン県を重工業地帯と指定(西側沿岸計画)し、2つの石炭火力
発電所プロジェクトを立ち上げる理由を与えた人物であります。

地域住民は公聴会前に、すべての開発許可と環境影響評価の承認を無効にし、
また公聴会の評議員を選ぶことができるよう要求しました。政府はこれらの要
求を退けたため、地域住民は公聴会をボイコットしました。UPDC社は、地域住
民の何人かにお金を渡し、公聴会に参加してプロジェクトを支援させており、
また交通費や日当を支給し、記者には最高級の宿泊施設と食事を提供していま
した。

2000年の2月の公聴会以降、その結果は公表されていません。首相府のエネル
ギー担当大臣であるSawit Bodiwihok氏は、国会が解散する1か月前であり、
また2001年1月の総選挙の前である2000年の10月10日に閣議で最終的な報告を
行ないました。公聴委員会は4つの選択肢を提案しましたが、内閣は公聴会が
成功裏に終了したことだけを承認し、何の根拠もなく、プロジェクトを推進す
ることを承諾しました。

●共有地に関する汚職
建設予定地は、地域住民から購入したいくつかの土地から構成されておりま
す。建設予定地全体に対してひとつの権利証書が発行されているとはいえ、そ
のなかには、自然の河川や共有地、道路が含まれており、それらは合計10ライ
(1.6ha)以上になります。UPDC社は、トンチャイ村議会から建設予定地の貸
借権を獲得しました。ところが法的には、トンチャイ村議会は10ライ以上の貸
借権を与える権限を持っておりません。バーンクルート環境グループは土地の
登記について調べた結果、不法な点が明らかになりました。水の流れを変えて
しまう水路について隠蔽していた点、新しい権利証書で示している共有地全体
が10ライ以下になるように調整してある点、そしてトンチャイ村議会や関連し
た行政機関に賄賂を提供していた点です。環境グループは国家汚職防止委員会
と国家評議会に対して、これらの汚職に関する不服を申し立てました。現在
は、新たに設置された行政裁判所でこの件に関する審議が行われています。

●プロジェクト合同監視委員会とUPDC社が組織した他のグループ
UPDC社は、地元の経営者や村長、村長グループなどの組織、主婦グループ、人
権保護グループからなるプロジェクト合同監視委員会を組織しました。しか
し、上記したグループはプロジェクト推進者から直接の利益を享受する人々か
ら成り立っております。彼らは真に住民を代表しているとは言えません。彼ら
はプロジェクトを監視せず、すべてのケースでプロジェクトを支持するでしょ
う。これとは対照的に、バーンクルート環境グループは地域住民に受け入れら
れ、市議会選挙でも議席の大半を勝ち取っており、影響を受けるであろう近隣
のコミュニティとも連携を広げております。ここでは、プロジェクトの問題点
のいくつかを要約したにすぎません。バーンクルート市議会のメンバーは、地
域住民を代表し、プロジェクトの推進に反対いたします。タイ政府やUPDC社は
過去4年間地域住民の存在を無視し、極限にまで紛争を悪化させてきました。
人々の間でよく知られた言い回しがあります。「建設されれば、我々が燃やす
だろう」。地位住民はプロジェクトをやめさせることを決議しました。すべて
の人々の利益のために、破壊的かつ国際協力銀行のような融資者を含めて誰も
利益を得ることができないこのUPDC社のプロジェクトに融資をしないよ
う、我々は要求いたします。

Mr. Jeerawut Jaewsakun
バーンクルート市長
CC: トーメン社長、本部、日本

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このプロジェクトをめぐる詳しい情報は、下記のホームページをご覧下さい。


メコン・ウォッチ(日本語)
http://www.jca.apc.org/mekongwatch
久世宣孝氏の精力的な現地情報発信(日本語)
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9168/welcome_jp.html
グリーンピース東南アジア(英語)
http://www.greenpeacesoutheastasia.org/
プラチュアップ・ノー・コール(タイ語)
http://www.prachuabcoal.com/

この件に関するご質問やご要望などは下記までお気軽にお問い合わせ下さい。
<日本>メコン・ウォッチ 松本・福田
〒110-8605 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル5階
電話 03-3832-5034 ファックス 03-5818-0520
電子メール mekong-w@co.xdsl.ne.jp
<タイ>ウボン大学 土井利幸
電話 66-1-269-8939
電子メール toshi-doi@mtd.biglobe.ne.jp


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