タイのヒンクルート石炭火力発電所建設計画からの撤退要請

賛同のお願いです


呼びかけ人/メコン・ウォッチ&地球の友ジャパン

タイのヒンクルート石炭火力発電所建設に投資している日本企業への抗議のレ
ターへの賛同をお願い致します。エネルギー、環境、企業倫理、経済協力など
様々な分野に関わる団体・個人への呼びかけにご協力をお願い致します。締め
切りは12月19日です。

この発電所計画に対しては、環境社会影響への強い懸念から、4年以上にわた
って地元の被影響住民が激しい反対運動を続けています。にも関わらず、トー
メン、豊田通商、中部電力の3社は、国際協力銀行(JBIC)からの融資をあて
にしながら、この問題プロジェクトへ投資をしています。

計画されている発電所の近海は珊瑚礁がある豊かな漁場です。クジラやイルカ
も確認されています。その海に、発電所からの大量の温排水が流れ込む計画で
す。建設廃棄物は当初珊瑚礁の上に投棄されることになっていましたし、計画
が変更された今でも漁場に捨てられる予定です。この地域は観光地で、クジラ
やイルカは絶好の観光資源になると期待されていますが、原料の輸入石炭の荷
揚げのための埠頭建設などによって、クジラやイルカが生息できなくなる危険
性があります。

何度もやり直された環境影響評価はこうした懸念に十分答えていませんし、公
聴会は賛成派ばかりを集めて行われました。最も漁業被害を受けるバーンクル
ート市の議会は、圧倒的多数でこの計画に反対の決議をしています。1998年12
月には反対派住民と警官隊が衝突して流血の事態になりましたし、反対派リー
ダー宅へ銃弾が打ち込まれるなど、血なまぐさい事件が頻発しています。

そこで、私たちは、この発電所の開発事業体であるユニオン電力開発社に出資
している、トーメン(34%)、豊田通商(15%)、中部電力(15%)に対して、
沿岸漁業で生計を立てている地域の人たちを苦しませないためにも、この発電
所計画からできるだけ早く撤退するように求める手紙を出すことに致しまし
た。以下に手紙を添付致します。

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賛同して頂ける団体・個人の方は、「団体・個人名」、「個人の場合はご所
属」をお知らせ下さい。お返事は、メールまたはファックスでお願い致しま
す。締め切りは12月19日とさせて頂きます。
E-mail  mekong-w@co.xdsl.ne.jp
Fax  03-5818-0520
===========================================================

これまでの経緯や詳しい現地の情報につきましては、下記のホームページをご
覧下さい。

メコン・ウォッチ(日本語)
http://www.jca.apc.org/mekongwatch
久世宣孝氏の精力的な現地情報発信(日本語)
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9168/welcome_jp.html
グリーンピース東南アジア(英語)
http://www.greenpeacesoutheastasia.org/
プラチュアップ・ノー・コール(タイ語)
http://www.prachuabcoal.com/

**********以下、投資企業へのレター文面です************

                                                             2001年12
月   日
株式会社トーメン
  社長 田代 守彦 様
株式会社豊田通商
  社長 古川 晶章 様
株式会社中部電力
  社長 川口 文夫 様

タイのヒンクルート石炭火力発電所建設計画からの撤退要請

タイ南部のプラチュアップキリカン県に建設が計画されているヒンクルート石
炭火力発電所をめぐりましては、地域の自然環境や住民の社会生活に甚大な影
響を及ぼす恐れが専門家などから指摘され、また被影響地域の議会による計画
反対決議を含む住民の激しい反対運動が続いています。同事業を推進するユニ
オンパワー開発会社(UPDC)に合計で64%を出資している日本企業貴三社に対
しまして、各社の企業倫理・環境憲章などに照らし合わせ、現地の環境保全と
社会生活の安定という観点から、同事業から撤退されることを強く要請致しま
す。

同事業は総出力1400メガワットの石炭火力発電所を建設し運営する世界最大級
の独立発電事業(IPP)で、これによって、大量の温排水が近隣の海に排出さ
れるため、周辺の海の生態系が大きく変化し、地域住民の生業である漁業に甚
大な影響が出ることが懸念されています。また環境影響評価(EIA)に繰り返
し重大な欠陥が見つかり、公聴会も計画を推進する官庁の元関係者を委員長に
据えた不公平なものでした。漁業被害を最も受ける住民たちが多く住むバーン
クルート市(テーサバーン)議会は同事業への反対決議を圧倒的多数で採択す
るなど、激しい抗議運動が4年以上も続いています。

具体的な問題点を以下に列挙いたします。

●環境影響評価(EIA)の度重なる欠陥
同事業は、1998年に地元住民の激しい抗議行動で一端は白紙に戻された上、環
境影響評価(EIA)が建設予定地沖に存在する珊瑚礁の重要性を無視していた
ことが発覚しました。EIAを実施したコンサルタント会社は入札指名停止処分
を受け、追加調査が行なわれましたが、その際も海洋生態学上の調査はわずか
2か月間で終わり、内容についても依然として以下のような問題点が指摘され
ています。

・EIAでは164種の海洋生物を確認したとあるが、99年8月にタイ政府漁業局の
チャワリット博士のチームが行なった調査では470種が確認されている。
・EIAではバーンクルート市には99世帯の漁民と100隻の漁船しかないとしてい
るが、実際には500世帯の漁業関係者と300隻にのぼる漁船がある。これに加え
近隣の他の行政区からこの海域を訪れて漁を行う住民がいる。
・建設後の廃棄物投棄場は最初のEIAでは珊瑚礁の上だった。追加調査でも依
然として豊かな漁場に投棄することになっているにも関わらず、その影響を調
査していない。
・追加調査が緩和策として打ち出している海での養殖プロジェクトでは470種
のうちわずか7種の海洋生物しか対象となっていない。
・今年に入って沿岸でクジラやイルカといった環境保全や環境資源の簡単から
極めて重要な生物の生息が確認されたが、それらへの影響はEIAにも追加調査
にも含まれていない。

●公聴会の不公平性
98年12月の建設計画反対派住民と警官隊との衝突を契機に、タイ政府は公聴会
の開催を命じましたが、2000年2月に開催された公聴会は公平性に欠けたた
め、出席したのはほとんど賛成派ばかりの200人だった一方、同じ日に開催さ
れた抗議集会には千人が集まりました。反対派住民は、公聴会で建設計画の是
非を問うのならば、一端計画に関わる種々の許認可やEIAへの承認などを取り
消し、公聴会の委員選出プロセスに地元の住民グループの参加を認めるべきだ
と主張しましたが、受け入れられませんでした。そればかりか、公聴会委員長
に、プラチュアップキリカン県を重工業地帯に定めて同事業に道を開いた国家
社会経済開発委員会(NBSED)の前事務局長が指名されました。そのため、多
くの住民が公聴会をボイコットしました。しかも公聴会の結果がどのように建
設計画に反映されたかの説明はなく、その結果すら未だに公表されていませ
ん。

●被影響地域の議会による反対決議
タイの97年憲法第290条では、地方自治体は、地元の自然環境や住民の生活・
健康に影響が出る恐れのある管轄地域外のプロジェクトや活動の検討、あるい
は自然資源や環境の保全活動に参加できることがうたわれています。このプロ
ジェクトは人口5000人のトンチャイ村(タンボン)に位置していますが、隣接
する人口4300人のバーンクルート市(テーサバーン)は被影響住民を多く抱え
る自治体であり、憲法第290条に基づけば、プロジェクトの重要なステイクホ
ルダーです。そのバーンクルート市の議会が計画に反対している事実を重く受
け止める必要があります。

●その他の問題点
上記の点以外にも、現在40%前後と言われるタイ国内の電力供給過剰を考えれ
ば、大規模な火力発電所計画は不要な公共事業であるという議論がタイ国内に
あります。また石炭火力発電所が引き起こす大気汚染や地球温暖化問題に対し
ても厳しい批判がタイ国内外から出されています。さらに、土地の取得をめぐ
る汚職の疑いについてタイ政府の国家汚職防止委員会が地元住民の訴えを受理
しました。

ヒンクルート石炭火力発電所建設計画には、これだけ多くの環境・社会影響や
計画段階での問題点が指摘されています。開発企業体のUPDC社に出資している
貴三社は、いずれも自然環境や地域住民との共生を企業活動の理念にうたって
いると理解しております。例えばトーメンは、自らを『環境先端企業』と呼
び、『環境憲章』の中で「事業活動において、地球環境の保全と地域生活環境
に配慮」するとしています。豊田通商は、基本理念で「人、社会、地球との共
存共栄」をうたい、行動指針の中でも「世界の人々に喜んでいただけるオープ
ンでフェアーな企業活動に努める」と定めています。さらに中部電力も、『環
境宣言21』を策定し、「自らを律して行動するとともに地域や世界と連携しな
がら地球環境の保全に努めます」と明記しています。

ヒンクルート石炭火力発電所問題は、すでに国際的にも広く知られるところと
なり、輸出信用機関(ECA)のプロジェクトによる環境・社会影響を監視して
いる世界中の非政府組織(NGO)や市民グループが、貴三社の今後の対応に注
目しています。

自然環境や地域社会との共生を企業理念にかかげておられる貴三社が、この計
画に関与することで地域社会を支える自然環境とそこに息づく住民の生活を破
壊することのないよう、英断をもって同事業から撤退されることを強く要請致
します。

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この件に関するご質問は下記までお気軽にお問い合わせ下さい。
<日本>メコン・ウォッチ 松本・福田
  〒110-8605 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル5階
  電話 03-3832-5034 ファックス 03-5818-0520
  電子メール mekong-w@co.xdsl.ne.jp
<タイ>ウボン大学 土井利幸
  電話 66-1-269-8939
  電子メール toshi-doi@mtd.biglobe.ne.jp



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