黒部・黒薙川の自然を未来に残すために皆さんのご協力をお願いします


砂防ダムいらない?渓流保護ネットワーク(代表 田口康夫)
黒部川ウオッチング・富山ネットワーク(代表 金谷敏行)

 ダム開発の進む黒部川で、源流部と共に最後の秘境と言われる豪快な谷−柳又谷に
砂防ダム建設計画があることをご存知でしょうか。下流の黒薙川では黒薙ダムの建設
計画がありますが、さすがに大規模なダムを国立公園内に作ることは今日の社会情勢
が許さないのか1991年から調査は進んでいません。しかし、砂防ダムは4基が建
設されもうすぐ最後の砂防ダムも完成します。別途資料にあるように黒部工事事務所
が作成した『黒部川水系渓流環境整備計画』によると、柳又谷は北又谷と共に砂防ダ
ム工事を行うことが可能な地域(Cゾーン)となっています。国土交通省は表向きで
は計画の可能性を否定していますが、複数の関係者の話や建設業者に今後の仕事を確
保する意味でも工事実施を検討している可能性は高いと言わざるを得ません。
 こうした中、地元富山県で排砂を始めとする黒部川のダム問題にかかわってきた市
民団体「黒部川ウオッチング・富山ネットワーク」が呼びかけ、南会津のブナの伐採
を中止に追い込んだ渓流師の集団「宇都宮渓遊会」と砂防ダム問題に取り組んできた
全国ネットワーク「砂防ダムいらない?渓流保護ネットワーク」と合同で、今夏に柳
又谷の現地見学・調査に行ってきました。砂防ダムの予定地は柳河原(楊河原)周辺
と噂されていますが、ここは柳又谷の最も核心部される飛竜峡の上流であり、ここか
ら魚止めのオーレンの滝までわずか一時間余りの場所です。仮にここに砂防ダムが建
設されるなら柳又谷の釣り場や沢登りのフィールドとしての価値はもとより、日本で
ほとんど残されていない手つかずの自然環境がまたひとつ失われることになります。
現地を訪れた私たちは、みな柳又谷の素晴らしさに魅了されました。そして、ぜひこ
の谷を隣の北又谷と共に手付かずのまま残したいと思いを新たにしました。
 私たちは計画の存在を黒部工事事務所が認めていない中で、最初の取り組みとして
まずこの一帯を現状のまま保全するよう国土交通省に対し申し入れを行うことにしま
した。黒部川の魅力に心を動かされ登山や釣り、沢登りなどでこの地を訪れた皆さ
ん。理不尽な自然破壊や公共事業の無駄遣いに取り組む市民・住民グループの皆さ
ん。子供たちのために素晴らしい自然を残そうと考えている全ての皆さん。ぜひ、賛
同団体の一つとして呼びかけに協力していただけないでしょうか。
 なお、協力していただける団体の方は以下の宛先へ10月末日までにご連絡下さい。

連絡先
「黒部・黒薙川の自然を未来に残す連絡協議会」
(事務局「黒部川ウオッチング・富山ネットワーク」)
…富山市立山町若林13-39 金谷敏行
п父tァックス076-463-5607  
メール kanaya2001@nifty.com


《申し入れ書の内容》
黒部・黒薙川を現状のまま保全することを求めます

柳又谷・北又谷一帯は黒部川最後の「秘境」と言って過言ではない地域であり、全国の
登山・沢登り・渓流釣りの愛好家にとって憧憬の場所でもあります。3千mクラスの
山々から流れる豊富な水量と谷の深さ、発達した岩盤や削られた巨岩がおりなす峡谷
美などその魅力はつきません。柳又谷だけでも50平方km及ぶ広大な地域に人の手が
入っておらず、それ自体が原始の自然環境が失われてきたこの国にとって貴重であ
り、私たちはそのままの姿で後世に向けて保全すべきものだと考えています。
二つの谷の水源にあたる大蓮華山一帯の朝日岳・雪倉岳・イブリ山・長栂山・赤男山
では、環境省によって2000年度より3年がかりで生態系多様性の対象地域として
調査が進められています。この調査は登山道周辺でしか行われませんが、調査地点は
全国7ヶ所の中の一つであり、保全すべき大きな可能性がある地域であることを示し
ています。
1997年、建設省(現在、国土交通省)黒部工事事務所は『黒部川水系渓流環境整備
計画』を策定しました。計画では黒部川の今後の砂防事業に対する基本指針が明らか
にされていますが、その一つとして環境整備のため黒部川流域を4つのゾーンに分け
ることになっています。本流の十字峡より下の廊下間は「すばらしい景観をありのま
まの姿で保全する」Aゾーンとされていますが、最も広大な面積を占める黒部川支流
の小黒部・黒薙・祖母谷は「荒廃の激しい流域の整備に努める」Cゾーンに位置づけら
れました。
黒部工事事務所は、黒薙川支流の柳又谷の砂防ダム建設について現時点で「計画はな
い」としています。しかし、黒薙川流域の計画生産土砂量は現在黒薙川で建設・工事
中の5基の砂防ダムでは対応できない数字になっており、流域の整備も可能とするC
ゾーンに設定されたことは、今後柳又谷に砂防ダム建設が進められる根拠となりうる
ものです。本来川は、拡幅部の入り口上流・拡幅部内・蛇行部の内側などの場所に土
砂を堆積し、調整する機能を持っています。柳又谷では柳河原・広河原と二つの大き
な河原があり、それが天然の砂防ダムとしての役割を果たして来ました。下流に建設
されている宇奈月ダムは、土砂を海岸に供給する目的で排砂ゲートが設置されたこと
を考えれば、上流に土砂の移動を止めてしまう砂防ダム建設の根拠は希薄です。下流
域への災害対策を理由にしても、この財政難の中で事業の緊急性や必要性について多
くの国民の理解は得られません。
私たちは柳又谷・北又谷の谷沿いを含め流域一帯の調査すら行わずゾーン分けを行っ
た『黒部川水系渓流環境整備計画』の内容に強く抗議します。Cゾーンに決定された
黒薙川上流一帯に、これ以上砂防ダムが建設されれば川の景観は大きく変わり、生態
系へのダメージも計り知れません。こうしたことから、以下の点を申し入れます。

1.黒部川黒薙川上流の柳又谷・北又谷に砂防ダム工事など手を加えることを止め、
ありのままの姿で保全すること。
2.『黒部川水系渓流環境整備計画』そのものを見直すこと。
3.黒薙川など宇奈月ダム上流から流れてくる土砂対策のため、宇奈月ダムの排砂
ゲートの運用を見直しゲートの常時開放を行うこと。


ホームへ戻る