7日付けで、WWF-J、日本自然保護協会、日本野鳥の会が連名で、衆参両院の
環境委員宛てに、「自然再生推進法案に対する要望」を提出しました。


                            2002年11月7日
衆議院 環境委員会委員 各位
参議院 環境委員会委員 各位

                            (財)世界自然保護基金ジャパン
                            (財)日本自然保護協会
                            (財)日本野鳥の会


    「自然再生推進法案」に対する要望

 私たち自然保護団体は、2002年7月、「自然再生推進法案に対するNGOからの提
案」を提出し、自然再生推進法案に対して、6項目の修正を求めました。この後、
与野党の環境委員会委員各位による検討の結果、次の4項目の修正が行われ、本
臨時国会に提出されました。

1. 法の目的および基本理念に「生物の多様性の確保」を加える
2. 基本理念に、「透明性の確保」を加える
3. 「自然再生推進会議」の下に、「自然再生専門家会議」を設置する
4. 法施行後5年後に見直しをする

 自然保護団体の提案を受け止め、修正案が作成されたことに対しては評価をい
たします。しかしその後、霞ヶ浦においては(NPO)アサザ基金が水辺の植生の
回復を地道にすすめて来たにもかかわらず、国土交通省が水位上昇を伴う水位管
理の再開を一方的に決定したり、沖縄では本島最大の海草藻場を誇る泡瀬干潟に
おいて、海草移植をすれば埋め立ててもかまわないという理屈で埋め立てが開始
されるなど、自然再生事業に対する市民団体の懸念を拡大させる事態が発生して
います。

 このような状況下にあってもなお、自然再生法修正案には以下のような問題点
があり、自然再生推進法案に対する市民団体からの懸念を払拭できていません。
こうした点の解決が、担保されないのであれば、この法案は急いで可決すべきで
はなく、NGOを交えて法案作成段階から改めて議論した上で、出直すべきである
と考えますので、下記のとおり要望いたします。

                  ━━ 記 ━━

(1) 国会における本法案の審議にあたっては、法案に懸念を抱く団体・専門
家からも参考人として広く意見を聞いた上で、慎重に審議すること。

(2) 個々の自然再生事業が、環境基本計画や生物多様性国家戦略など、わが
国の環境保全に関する基本計画にもとづいて実施されるものであることを保証す
るため、環境大臣は、自然再生基本方針の下、国民意見のヒアリングを経て、
「自然再生基本計画」を樹立し、国土の自然再生のグランドデザインを具体的に
明示するものとすること。

(3) 個々の自然再生事業が、保全生態学にもとづいて科学的に実施されるも
のであることを保証するため、自然再生事業実施計画に、モニタリング調査とそ
れにもとづくフィードバックの方法に関する項目の記述を義務付けること。また
自然再生協議会には、独立機関として保全生態学の専門家を含む科学委員会を設
置し、自然再生全体構想と自然再生事業実施計画について、科学的な検討と助言
を行うものとすること。

(4) 個々の自然再生事業を、主務大臣が事業認定する際に、生態学的に過っ
た自然再生事業でないことを保証するため、主務大臣は自然再生専門家会議の意
見を「聴くことができる」ではなく「聴かなければならない」ものとすること。

                                以上


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