国土交通省の専門家会議が「脱ダム」へ
2003年1月18日 天野礼子


「淀川水系のダム凍結提言」「環境重視の大転換」と見出しのおどる本日の京都新聞朝刊。
『琵琶湖・淀川水系の河川整備のあり方を検討している
国土交通省の専門家会議「淀川水系流域委員会」が17日、
「ダムを原則として建設しない」などとする提言をまとめた。
河川整備は転換するのか。
今後、焦点は理念から具体的な計画作りへと移る。』と、
京都新聞は10段を使ってまとめている。その提言骨子は

▽ 治水、利水事業など河川整備において、生態系の保全と回復を優先的に検討する。
▽ 多自然型川作りから脱却し、1960年代前半の川の状態を念頭に「河川環境自然再生化計画」をつくる
▽ 湖や川の環境を重視し、琵琶湖やダム、堰の水位操作を見直す。
▽ 想定を上回る洪水で破堤しても、壊滅的被害を回避するため、安全度の低い地域での土地開発を極力抑制する。
▽ 水の需給バランスを一定枠内で抑えるため、強い権限・調整力を持つ「水需要管理協議会」を関係者間で設置する。
▽ 生態系を保全するため、河川敷の利用を厳しく制限する。高水敷でのグラウンドなど新規の整備は原則認めない。
▽ ダムは、ほかに有効な方法がなく社会的合意が得られた場合を除き、原則として建設しない。
▽ 整備計画や事業計画段階から判断形成過程を含め、住民に情報を公開する。

当「公共事業チェックを求めるNGOの会」代表のコメントには
「ダム撤去の時代 加速へ」という見出しがつき、次のように載っています。

『「原則としてダムを建設しない」との結論を、
国土交通省の設置した委員会が出すのは従来ならあり得なかったことだ。
全国の同様の委員会に与える影響は大きく、評価する。
今後、ドミノ倒しのように「脱ダム」の結論が続く可能性もある。
しかし、琵琶湖総合開発という利水問題の根本を検証しなかったことはたいへん残念だ。
提言が法的拘束力を持たないなどと称して、
国交省がそれでもダムを推進しようとするなら愚かなこと。
同委員会の結論はわが国の潮流、すなわち「脱ダム」になっていると心得るべきだ。
その上で、今後は個別の河川について「ダムありき」を前提とせず、
「ダムによらない治水」を進めるべき。官僚が真にダム開発を反省するなら、
彼らに一番厳しいNGOの提言も採用し、各地の河川政策を根本から変更する必要がある。
関西で三月に開催される「世界水フォーラム」の直前に
ダムを否定するこの結論が出たことは国交省には痛い。
市民にとっては、四月の統一地方選で「建設しない」から「ダム撤去の時代」へと
潮流を加速させるチャンスである。 アウトドアライター 天野礼子』 



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