2007年 9月 26日
「最上小国川の“真の治水”の検討を求める請願」


民主党 代表代行 菅 直人様

最上小国川の真の治水を考える会
会長 押切喜作
事務局長 草島進一

 私たちは、昨年、元京都大学防災研究所、元淀川水系流域委員会の会
長であられた 今本博健先生を現地に3度招きました。先生は、流域委
員会の恣意的な進め方や、流域の治水対策の問題点などを指摘されまし
た。また新潟大学 大熊孝 先生には、2004年より3度現地視察
と考察をいただいております。昨年、先生方には、以下のような代替案
を作成していただき、県に提出しました。

最上小国川“真の治水”案 06.10.28

京都大学名誉教授  今本博健
新潟大学教授    大熊 孝
法政大学教授    五十嵐敬喜
アウトドアライター 天野礼子

 これまでの「旧来型の治水」は、一定規模以下の洪水を対象とし、河
道改修やダムによって洪水を河道に封じ込め、水害を発生させないこと
を目標にしてきた。
 私たちが21世紀にかなえたい“真の治水”は、「いかなる大洪水があろうと
少なくとも人命に及ぶような壊滅的な被害だけは避けるようにする」もので、
しかも、、河川環境に重大な影響を生じさせず、数十年に1度の洪水のとき
ばかりでなく日常の生活にも役立つ治水方式である。

具体的には、河川対応と、流域対応による治水法を併用することとする。

1) 本来は河道であるところに建物が建ってしまっている。
   赤倉温泉地域の一 部を、河川掘削や拡幅、引き堤などで河道
   の流下能力を拡大させる。
2) 赤倉温泉下流域を「遊水地指定」し、洪水被害
   が生じたときには、「すべての被害」を補償する。
3) 域上流部の森林の、手入れがなされていない放
   置人工林等を間伐するなど、森林での保水能力を高める。
4) 土地利用の規制・建物の耐水化・道路の2線堤
   化などによって、氾濫した場合の被害を少なくしていくことを考慮する。

この代替案について、県は全くといっていいほど検討をせず、全く一方
的な判断で、昨年12月末の県知事の穴あきダム推進の発表に至ってお
ります。

 最上小国川の清流環境は山形県では随一。日本国内でも有数のもので
あります。
私たちは、公聴会などの席上で、「現在の清流環境を維持している
最上小国川は、相当の経済効果をこの地域にもらたしていると考える。
県はそれをどのように把握しているか」と尋ねました。

 すると県は「穴あきダムによって、環境に影響はないので、そうした
事は調べる価値がない。」と答えました。また、ダム推進派の集会の
ちらしには“日本一環境にやさしい「穴あきダム」”と書いてありました。

「真の治水を考える会」事務局長の草島は、昨年末に最新の「穴あきダム」
益田川ダム(島根県益田市)の現地視察をしましたが、その際、
益田川という川自体、工業用水の排水路に活用されている川であり、
「穴あきダムが清流環境を維持するもの」と確認する事は不可能であること
を確認しました。また、現地の担当者によれば、ダム建設前後の
環境モニタリングも実施せず、魚類の定量的、定性的調査も実施しておらず、
「環境にやさしい」根拠はどこにもないことが確認できました。


 赤倉温泉街は今、老朽化した旅館が雑然と並ぶ、山形県内で最も
入り込み客数が伸び悩んでいる温泉街の一つであります。
ダム建設推進を主張する旅館の一部に、それを期待する声があるものの、
たとえ15年間、ダム工事の関係者の宿泊客があったとしても
その先の見通しはたちません。

反面、ダム工事により、工事中の濁流で清流環境が失われてしまえば、
旅館を潤してきたアユ釣り客は足を完全に運ばなくなるでしょう。
また、ダム工事はゼネコンの仕事であり、ダム工事が着工されても、
ほとんど地元の土建業者に仕事はまわってこないのではないかと考えます。

 「持続不能なダム開発」か、「持続可能な、清流を活かし、温泉街を
再生させる河川改修」か。長期的な視点をもてば、どちらが地域にとっ
て有益であるかは一目瞭然であります。

 また、最上小国川の本流である最上川は、現在、出羽三山とともに
「世界遺産」にすべく山形県では運動を展開していますが、その流域内
随一の清流・小国川が失われれば、世界遺産どころの話ではないと考えます。


私たち、“真の治水”を考える会、は、最上小国川漁協と連携を
し、清流とともに持続可能な地域再生のための“真の治水”を叶えるた
めに、行動をしてまいります。

先生には、以下の3点をお願いしたく存じます。

▼最上小国川ダム反対にご協力いただき、予算の凍結、廃止へのお力添
えをお願いしたく存じます。

▼最上小国川について、この、国内有数の美しい天然河川がもたらす効果を
科学的に評価していただき、国内随一といえる清流環境、日本の河川の
本当の美しさを保持できる“ダムに依らない治水策”について、
徹底的に協議することへのお力添えを頂きたく存じます。

▼世界遺産への登録運動が「出羽三山」とともに進む、「最上川」の支流、
最上小国川のダム問題であります。ぜひ現地においでいただき、
日本有数の清流環境を維持しつつ、治水を叶える「真の治水」について、
共にお考えいただきたく存じます。


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