VOL.17-3


千歳川放水路計画が止まる!
環境フォーラム「とりもどそう北海道の川」実行委員長 小野有五   

 今年の1月17日、北海道開発局長官は、新春記者会見のなかで、ついに歴史的ともいえる 「千歳川放水路計画の見直し」にふれました。
 建設省河川審議会で放水路計画が策定されたのは、1982年。それからすでに15年がたっています。この間、北海道開発局は、 毎年20億円以上の税金を「調査費」として使い、「放水路だけが堆ーの洪水対策」と宣伝してきました。
 千歳川放水路計画は、石狩川と千歳川の合流点に締め切り水門をつくり、洪水時には千歳川の水を逆流させて幅200〜400m、 最さ38Kmという巨大な放水路に導き、洪水流を太平洋に放出してしまおうという自然の大改造計画です。
 総工費は数年前まで2200億円。それが3年前に出た報告書では一挙に4800億円にはねあがりました。 工期は少なく見積もっても20年という、河川をめぐる日本最大の公共事業です。
 確かに放水路は、千歳川の水をぬいて流域の異なる太平洋に流してしまうわけですから、他の洪水対策に比べると、 千歳川の水位は低くできます。けれども、洪水時だけ放水路から放出させる途方もない濁水によって太平洋沿岸の漁場は全滅し、 大地を深く掘削する放水路のために、地下水は放水路に流出して、 日本最初のバード・サンクチュアリがあるラムサール指定湿地のウトナイ湖と、 それを支えている美美(びぴ)川の自然は破壊されるのです。
 それだけではありません。関西新空港建設のための埋め立て土量にも匹敵する1億2000万トンの掘削土の処理など、 自然の大改造がもたらすインパクトは、あげればきりがありません。
 けれども、放水路計画の最大の問題点は、自然環境だけでなく地域社会にもこれほど重大な影響を与える公共事業計画が、 地域住民はおろか、地域自治体の代表すら知らないまま、密室の中で、 一方的に河川審議会で決められてしまったという、その決定手続きにあるのです。
 開発局は、なぜ急に「見直し」を言い出さざるを得なくなったのでしようか。水害に悩む地元住民が、 いつまでも進まない放水路計画にようやく疑問をもち始めたからです。放水路計画にメリットはあっても、 デメリットのほうが多いこと、しかも放水路計画は解消不可能なデメリットをもつことを、 これまで計画を推進してきた人たちまでが気づきはじめたからです。
 まだ、さまざまな紆余曲折はあることでしょう。統廃合問題で存続の窮地に立たされている北海道開発庁・開発局は、 千歳川放水路計画が通れば完成までの最低20年は存続が保証されると、「見直し」 を言いながら一方ではなりふり構わぬ行動にでるかもしれません。
 しかし、流れは今、はっきり変わりました。千歳川放水路計画が人々から支持されることは二度とありえない、と思います。 長良川での長い戦いが、建設省の意識を変え、日本人の意識を変えてきたからです。 21世紀にむけての新しい治水のあり方を述ペた最近の河川審議会の答申をみれば、 千歳川放水路計画がそれに逆行した特代遅れの計画であることは誰の目にも明らかだと思います。
 私たちは、この新しい流れを定着させるために、そして今、千歳川放水路計画を本当に中止させるために、 3月16日、札幌で「とりもどそう北海道の川、ストップ・ザ・放水路&ムダなダム」 という環境フォーラムを予定しています。本多勝一・筑紫哲也・野田知佑・藤門弘といった面々が顔をそろえる、 北海道ではこれまでにない大きな集会(1500人規模)になります。地理的に離れていますが、 長良川に関わってこられた皆様の、熱いご支援をお願いいたします。

   フォーラムの問い合わせは 011・222・4383   おの ゆうご
         北海道大学大学院地球環境科学研究科 地球生態学講座・教授


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