「21世紀に、山河をとりもどすために」


1998年10月

長良川河口堰建設をやめさせる市民会議 代表

公共事業チェックを求めるNGOの会  代表

天野礼子

 橋本総理の「行政改革会議」は、近代科学を使って山河を破壊し尽くした20世紀

文明への反省も21世紀への思想も持ち得ておらず、「国土開発庁」などというよう

な巨大でしかも破壊型の省庁をまたぞろ生むような発想です。いま世界中で、こんな

破壊的なネーミングの省庁を持っている国はどこにもありません。これが11月にも

与党三党調整のみで閣議決定にかかり、国会での議論も各党の対抗案もないままで、

2001年から実行されようとしています。



 そこでこの度、私共、公共事業問題に取り組んでいる全国各地のNGO400団体

の組織、「公共事業チェックを求めるNGOの会」と、国会で同じ問題に取り組んで

いる「公共事業チェックを実現する議員の会」(超党派)は、「もう破壊型の公共事

業はいらない」ことを橋本総理にハッキリと申し立てるために、急遽、下のようなシ

ンポジウウムを実行することに致しました。多くの皆さまの御参加をお願い致します。



 一方で、「橋本行革会議」の進む中、私達「NGOの会」と「議員の会」は、9月

13日・14日の両日、長良川河口堰の運用が行われている現地、三重県長島町にお

いて、連続会議「日本の山河と公共事業」「世界水資源会議」を国内外のゲストを招

いて開催致しました。「日本の山河と公共事業」では、建設省・農水省・林野庁とい

った省庁の公共事業がどのように山河を破壊しているか、「世界水資源会議」では、

21世紀に私達は「水」をどのように使うことが地球のために賢明であるかを議論し

ました。(この連続会議への御協力、御参加いただいた皆さま、ありがとう存じまし

た。)



 その中で、私達が得た最も素晴らしい情報は、別紙新聞記事のように、これまで世

界中のダム建設等に出資し、NGO側から常に批判を浴びてきた世界銀行でさえ今で

は変身し、この4月からIUCN(国際自然保護連合・米国や日本政府も加盟する世

界最大の環境NGO)と共同で世界のダム事業の調査を開始したということでした。



 世界の潮流は、“公共事業見直し”なのです。1980年代の後半から、ヨーロッ

パ諸国では、「公共事業の見直し」や「河川政策の見直し」が始まってきました。ア

メリカでは1994年に「ダム開発の時代は終わった」ことが宣言され、ダム計画の

中止、ダムの撤去が始まっています。これらは「自然の回復」を求める国民の声だけ

でなく、財政面からも必要とされ始まったものです。



 わが国では本当に必要な公共事業の他に、政治家や財界のために官僚が考え出す「

公共事業」というものが、いつのまにか存在し、それが不必要にもかかわらず、国債

を前倒しして進められた結果、いまや膨大な財政の困窮を招いています。これを21

世紀に入る前に反省することが、本当の「行政改革」であり、政官財癒着腐敗の「政

治倫理」の追求ではないでしょうか。



 自民党以外の各政党に「橋本行革案への対抗案」をお出しいただき、「21世紀の

山河を回復する処方箋」を政治家と国民が今、生み出さなければ、もう日本の山河に

未来は無いという、そんなせっぱつまった状況です。



 特に社民党、さきがけの与党二党が、「環境破壊型」の自民党ではなく、山河回復

を願う国民と共に歩んでいただけるような世論作りを急ぎましょう。



 各界の皆さまの御協力をお願いします。


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