建設省の長良川河口堰モニタリング結果説明会の報告


長良川河口堰による自然環境への影響を調べたモニタリング結果の説明会が、岐阜市においては7月18日に行われた。 同様の説明会が7月11日には三重県長島町で行われ、来る7月24日には三重県桑名市で行われることになっている。

説明会は建設省中部地建と水資源開発公団が主催し、今年3月に解散した長良川河口堰モニタリング委員会がまとめた提言書を元に行われた。 提言書の内容については建設省のホームページ「川と水のページ」のTOPICSに全容が出ている。

説明会は2時間にわたって行われ、前半は建設省の職員による説明がなされ、後半は質疑応答が行われた。

建設省側は河口堰建設後行った浚渫による治水効果と堰により塩水が入らず安定した取水ができると河口堰による治水と利水の効果を強調した。

自然環境への影響についてヤマトシジミについては河口堰の上流部では生息できなくなったことは認めたものの、これはすでに予想の範囲内のことだとしている。

サツキマスの漁獲量については「減少した年は木曽川、揖斐川でも減少しており、年変動の範囲内」としている。アユの遡上や降下の状況については「遡上も降下も順調」としている。

質疑応答に入ると参加者から、「説明によるとアユやサツキマスの遡上は順調というが実際には河口堰建設後はアユもサツキマスもさっぱり取れなくなった。これらのデータが正しいというならそれを第三者が証明する方法はないのか。」という友釣り歴20年という人の質問や、プロのダイバーという人からは「アユは減ったし小型になって10センチに満たないようなアユが産卵している。今後5年間、ゲートをあけて調査して欲しい。」との要望も出された。

これに対し建設省側は「調査結果との違いは何が原因かわからないが、調査は考えられる中でベストの方法で行った。ゲートの開放は工業用水などに甚大な被害を与えるのでまったく考えていない。」と答えた。

また別な参加者から「アユの遡上状況について、稼動後の調査日数は稼動前の調査日数の倍以上なのに観察された実数で比べるのはおかしい」との疑問も出された。これは例えば平成5年は調査日数22日、計測実数約139万尾、平成11年はそれぞれ55日と約142万尾になっており、一見遡上数は変わっていないように見えるが、計測実数を調査日数で割ると平成5年は約6.32万尾/日、平成11年は約2.58万尾/日となり建設省が行った調査でもアユの遡上数は半分以下になっていることを意味する。

岐阜市で行われた説明会だけに参加者のアユやサツキマスの遡上数に対する関心が高く、質問や要望もそれに関することが多かった。長良川で長い間漁や釣りなどしてきた人たちはアユやサツキマスの遡上が激減していることは実感として捉えており、建設省によるモニタリング結果の説明は、不信感を増大させることはあっても彼らを納得させることは何もなかった。 長良川河口堰モニタリング委員会によるモニタリングははじめに答えありきのモニタリングであり、結果についても建設省は建設省に都合の悪いデータは軽視するか、都合よく解釈して公表しているというのが今回の印象だ。

平成12年7月20日

岐阜市 島田俊夫


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