世界河川会議論文 1997年11月

川のエコシステム回復のためのタム使用事例研究 キャニオン峡谷ダムとコロラド川
David L. Wegner 米国(抄訳:富田)


The year 2001 GIFU

岐阜・2001年の会 会報より 転載 編集・発行人−松井英介

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はじめに
 川を制御してきた歴史は古い。その歴史の中でダムはますます巨大化していった。最初は季節的な洪水から周辺住民を守るためであったが、後に水資源の開発が目的となった。今日では鋼鉄製のダムが作られ、川とともに配水管が張りめぐらされている。米国では2000もの水力発電のダムが存在する。
 川の開発のため、犠牲も生じた。ダムの上、下流における従来の水や陸地のエコシステムが、分断されたり破壊されたりした。今日の社会では、ダムや分水路の河川環境への影響や、自然資源の破壊が問題となっている。こうした状況により、川の管理には、川を管理するという従来の発想と、エコシステムを維持回復するという新たな必要とのバランスを保った、革新的なアプローチが求められている。環境に関する法整備、一般市民の必要、失われたエコシステムの回復、自然資源の減少などが総合的に考えられた、新たなアプローチと哲学の構築が急務である。

ダムによる川の上、下流の自然資源に対する影響

 ダムの自然環境への影響は次のように考えられる。
・ダムの上流の生息地が浸水することによって、流域の繁殖性が失われる。
・外来種の魚、鳥、植物種が貯水湖に入り込む
・下流の河口と生息地を支えていた堆積物がせき止められる。
・水質の変化
・河口とその付近の生息地と繁殖性の消滅
などである。

ダムが機能することによる影響
 ダムが動き始めると次のような影響が生ずる。
・季節による流量の変化がなくなる。
・毎年同じ流量になる。
・一日の中での流量の振幅に変化が生ずる。
 ダムや分水路の流量は、水使用者の需要に応じて決まる。しかし、洪水は、本来の川のシステムからすれば、重要な働きである。洪水は堆積を年ごとに新しくし、在来種に栄養を与える。ダムによって自然の働きによる川のエコシステムや河口の保全作用が失われる。

開発による複合的な結果
 ダムや分水路が、一河川こつき、多数存在するならば、環境も一層悪化する。このようなシステムは水が効率よく流れることを第一の目的に作られているので、エコシステムは分断され河口は大きな影響を受ける。

川のエコシステムの保護と回復は科学と計画的な手法を用いたアブローチが必要である

 川のエコシステムを維持回復するために、従来の考え方は、通用しない。革新的な方法がなければ、過去の悪影響が蓄積するばかりである。世界の関心は、私たちの環境の健全性、特に川、河口、海の状況が懸念されているのである。
 従来の河川管理に代わる新たな方法は、適応型の河川管理と呼ばれる。これは、科学と行政の必要と社会的な需要がひとつの場に持ち込まれて意思決定されることによって、さまざまな必要のバランスを達成する方法である。

 


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