長良川河口堰運用に伴うモニタリングおよび環境等への影響などについての 

 ”新しい対話”第5回議事録


:議事録作成:
長良川監視委員会
長良川河口堰建設をやめさせる市民会議

1996.10.25(金) 18:30 〜 21:40   郡上八幡総合文化センタ−(岐阜県郡上郡八幡町島谷)

   出席者    長良川監視委員会・市民
    丸山 隆 (東京水産大学 海洋環境学)
    山内克典 (岐阜大学 生物学)
    田尻秀雄 (郡上漁協 総代)
    松山 覚 (郡上漁協 組合員)
    庄司幸彦 (長良川中央漁協 総代)
    服部英夫 (長良川中央漁協 組合員)
    天野礼子 (長良川河口堰建設をやめさせる市民会議 代表)
   建設省中部地方建設局・水資源開発公団
    森北圭昭 (建設省中部地方建設局 河川調査官)
    泊  宏 (建設省中部地方建設局 河川部 河川計画課長)
    溝口宏樹 (建設省中部地方建設局 河川部 河川調整課長)
    高垣美好 (建設省中部地方建設局 河川部 流域調整官)
    田中慎一郎(建設省中部地方建設局 木曽川下流工事事務所 所長)
    竹村具美 (水資源開発公団中部支社 建設部 次長)
    原 念明 (水資源開発公団中部支社 建設部 審議役)
    住谷昌宏 (水資源開発公団 長良川河口堰管理所 副所長)


はじめに:岩垂環境庁長官は「ゲ−トを上げろ」と言った

天野:
長良川河口堰運用開始後も、5年間のモニタリングを建設省は続け、市民は長良川監視委員会を作って建設省を監視している。市民と建設省は”新しい対話”を設定し話し合いを続けており、これまで名古屋・岐阜・桑名・美濃で行なってきた。今回、郡上八幡で5回目を行う。
この間、水質・底質・アユ・サツキマス・シジミなどに莫大な被害が出ているのに対し、被害は軽微との主張を建設省官僚は続けている。
世界の状況を見れば、砂がたまってダムが機能しなくなることが明らかになっている。アメリカでは、第1に経済がダムを支えきれないこと、第2に税金による環境破壊は国民が認めないこと、第3にダムに代わる代替案があることにより、ダム建設を行わないことに方針変換した。これまでのダム作りを先進国は見直す方向である。
岩垂環境庁長官が9月に長良川を視察した。建設省官僚と協議して作ったと思われる、環境庁官僚の準備した文書には「大きな被害がない」と書かれていたが、岩垂長官は「ゲ−トを上げろ」と発言した。岩垂長官はよく勉強していて、被害の事実をよく知っていたのだ。
今回は、モニタリング委員会とは何か、そのあり方・委員の人選などについて建設省に最初に説明してもらう。
長良川監視委員会・市民:自己紹介(略)。
森北:
10月1日から中部地建河川調査官に就任。その前は関東地建霞ヶ浦事務所、その前は本省河川局にいた。
長良川河口堰の目的は治水と利水の2つ。95年7月6日にゲ−トを閉じ、マウンドの浚渫・長良導水事業などが現在進行中。
建設省は94年1月に環境政策大綱を発表した。環境を内部目的化することを打ち出し、環境を創造するようにしている。長良川では運用前も後もモニタリング調査をやっていて、デ−タを公表しきちんと議論する。”新しい対話”もその一環。
中部地方建設局・水資源開発公団:自己紹介(略)。
モニタリング委員会は、建設省官僚の主張を肯定するためだけのもの
溝口:
モニタリングは95年に開始。調査項目は、1)防災・2)水質底質・3)生態。モニタリング委員の指導・助言を受け5年間実施し、結果は公表する。
防災に関わる輪中への浸透水対策として、目視観察・73地点での地下水測定などを実施。浸透水の影響は見られない。塩分は94年8月から半年に1回観測。5回ぐらいのデ−タで見ると全体として大きな変化はない。
水質・底質については、水質自動監視装置を長良川に6ヵ所、揖斐川に一つ、木曽川に一つ設置し、水温・DO・COD・pH・リン・窒素・クロロフィルなど10項目ぐらいを24時間自動観測している。また定期調査として、毎月1日/1日2回採水分析している。また、流入支川を含めた広い範囲の詳しい調査を詳細調査として行っている。水面監視パトロ−ルは、河口から30kmぐらいの間を船を使って夏は毎日、10月から翌年5月までの間は週1回行っている。色・濁り・藻類などを調査する他、簡易センサ−による計測も実施している。
4ヵ所の10年間の定期調査の結果を見ると、DO・BODは環境基準を満たさない時も一部あるが、大きな変動はない。DOを平面的に広く調査した結果では、深堀れ箇所で低いDO値も観測された。自動監視装置のデ−タでは、96年7〜8月の夏はクロロフィルAの高い値などいろいろ出ている。水面監視パトロ−ルでは、95年8月29日から数日間、葦原と背割り堤の間のところでアオコ発生を確認している。
ゲ−トは、全国で初めての全てが2段式の水門。アンダ−フロ−・オ−バ−フロ−の効果的な運用を今後検討する。
底質は月毎に調査しているが、砂質からシルト(粘土)質への移行は見られない。堰下流150mのところでは、堆積厚さの大きな変化もない。
生態に関し、アユ・サツキマス・その他魚類の遡上・降下状況を調査している。鮎の遡上は96年は例年より1ヵ月遅れ。忠節(50km)地点での推定遡上数は550万尾。サツキマスの、38km地点の漁師の漁獲数は96年は950尾。サツキマスの96年の遡上は半月遅れ。岐阜市場への入荷も同じ傾向。仔鮎の降下は95年は2億6000万尾。10月上旬から1月中旬に降下しているのを堰地点で確認。
その他、動植物全般を調査中。淡水性の種への移行が堰上流で見られている。調査結果は公表していく。
天野:
モニタリング委員会のあり方と運営の実態について説明を求めたのに、的外れな説明だ。
建設省官僚の調査をモニタリング委員が審議するが、委員は建設省官僚の指名。市民の推薦した委員は1〜2名しか入っていない。五十嵐建設大臣当時の追加調査時の委員がほとんど横滑りで委員になっている。
10月22日の中日新聞記事にもあるように、環境への影響などについて観測デ−タを基に委員が議論するワ−キンググル−プの設置を、10月21日のモニタリング委員会で決めた。委員会の大半が、膨大な資料についての建設省官僚の説明に費やされ、委員間の議論が不十分なためだ。
モニタリング委員会は、膨大なデ−タを説明し建設省官僚の意見を押しつけるだけのものと思っている。建設省官僚が委員を指導しているのが実態だ。委員から指導を受けているようには思えない。
森北:
この場はモニタリング委員会を議論する場ではない。
天野:
長良川河口堰をよりよく運用するためモニタリングを5年間やっている。そのモニタリング委員会の現状をどうして答えれないのか。
森北:
委員会の結果は公表している。
天野:
公開・公表でやっているモニタリング委員会がどのように運営されているかを何故説明できないのか。議論が不十分だという不備があるから、委員の方でワ−キンググル−プを作ったという。今までは何がまずかったのか説明せよ。
森北:
モニタリング委員会は昨年3回今年2回開催。記者会見で座長が要点まとめを公表する。デ−タ量が膨大になっているのでよく考えたいということでワ−キンググル−プ設置の要望があった。
天野:
座長の人選はどうしているのか。
森北:
その都度、委員の中で互選。
天野:
何で決めるのか。手を上げた人がやるのか。
泊 :
その時々、委員が決めている。
天野:
建設省官僚の説明が膨大で、委員会では委員が議論ができないので、ワ−キンググル−プを設置することになった。モニタリング委員会を何故公開しないのか。
泊 :
94年の調査委員会が前身。会議の中身は非公開/結果は公表ということを、このとき委員が決めた。
天野:
公開の原則に反する。
森北:
議論の結果の公表で十分だ。
天野:
建設省官僚の方から、公開することを積極的に委員に求めよ。
森北:
最初の結論を踏襲している。
天野:
今回の衆院選挙にあたり9党に公開質問した。11のダム事業について建設省官僚が行っている「ダム事業の評価システムの試行」は、公共事業チェックの機能を果たすかという質問に対し、自民党以外は果たさないと回答した。
モニタリング委員会も同じ性質のものだ。長良川にとって重要な魚類の委員は、当初、愛媛大学の水野先生・岐阜大学の和田先生の2名だった。水野先生が辞任されたので追加の委員を推薦したのに受け入れられていない。建設省官僚の説明を、たった一人の委員で肯定するためだけに、モニタリング委員会が行われている。
この場で次の2点を要求する。
1)モニタリング委員会の公開
2)魚類の専門家がいないのは大問題なので、水野先生に代わる委員を入れること
森北:
1)公開については、委員会の決めること。
2)委員は適切だ。この場は、委員についてどうこうする場ではない。
天野:
魚類の委員の追加の必要性を委員会に諮れと言っている。諮られたのか。
森北:
建設省官僚が決めた委員会であり、十分に適切に機能している。目的は達成していると考えている。
丸山:
適切に機能していると誰が判断しているのか。
森北:
建設省官僚が機能していると判断している。

長良川中央漁協の署名運動
  長良川河口堰のゲ−ト開放を要求する

庄司:
9月27日の中日新聞で報道された、長良川中央漁協の「組合運営を考える会」の署名と漁協への申し入れについて、経過などを説明する。
6,600名の組合員からなる長良川中央漁業組合には、約50人に1人の割で102名の総代がいる。「組合運営を考える会」では、そのうち70名の署名を集めて、春と秋の2回の長良川河口堰のゲ−ト開放を、建設省や県に組合として要求するよう申し入れた。70名の総代は、最高の議決機関で組合をつぶすこともできる数だ。
95年の鮎の不漁は暖流のせいだとしてかたずけられ、漁協は1,200万円の赤字になった。96年はさらに不漁で、もっとひどい赤字となろう。そのため、天然の鮎を取り戻すため、長良川河口堰のゲ−トを開けるよう建設省に要求することを漁協に求めるため、運動し署名を集めた。本来、漁協がやるべきことだ。

今年の鮎は最低、去年より悪い 河口堰ゲ−トを開けないと鮎は遡上できない

庄司:
今年は360万尾の遡上があったというが、中央漁協も郡上漁協も去年よりもっとひどい。天然の鮎が全くいない。状況を説明せよ。
天野:
全ての新聞に織り込まれ全戸配付された建設省のパンフレットが会場に配付してある。それを使って説明したらどうか。
原 :
それに基づいて、鮎の遡上について説明する。
95年に鮎の遡上が少なかったのは、暖流・黒潮など気象条件による。96年の河口堰地点での4〜6月の鮎の遡上数は364万尾、河口堰地点での運用前のデ−タは無い。忠節橋(50km)地点では93年から観測しており、94年は700万尾、95年は200万尾、96年は7月で500万尾、最終的には550万尾。郡上では遡上数を確認していない。
庄司:
美濃(80kmぐらい)では、その1割も確認されていない。鮎はどこへ行ったのか。
原 :
5〜6月には遡上は無かったが、6月下旬から7月に大きな群れを確認した。友釣りは7月は順調だったと聞いている。
庄司:
見解が全く異なるのでモニタリングは信用できない。7月初め、10cmに満たないのが上ってきた。本来なら河口堰を上れないのが、6月に3日間ゲ−トを開けたときに上ってきたのだろう。
森北:
6月下旬、墨俣で流量が1,000トンを超えたので、6月25〜26日の2日間ゲ−トを全開にした。
庄司:
そのとき河口堰を通過した鮎を、7月初めに釣り師が確認した。ゲ−トを全開にしないと、美濃で確認できるほど天然鮎は上ってこないのだ。堰が影響していることを認めよ。
会場:
堰のできる前にどれだけ上ったのか。
森北:
94年が忠節地点で700万尾。運用は95年7月から。
会場:
そのときの鮎の体重はどれだけか。
原 :
10cmになるかならないかぐらいで、体重は5gぐらい。今年も最初は5〜12cmぐらいでバラバラだったが、正規になると河口堰地点で6〜7cmぐらいに集中してくる。
会場:
7月に上った鮎は10cmぐらい。例年なら4〜5月に上るべき鮎。堰があったので今年は上れなかったのだ。
原 :
例年は4月ぐらいから遡上するが、今年は遡上が遅かった。忠節は6月、美濃は7月。今年は、伊勢湾の水温が低くて鮎の成長が遅れた。
会場:
700万尾というのは、過去もこの値と思ってよいか。
森北:
93年・94年とも700万尾。KST(61〜63年)のときは漁獲量460万尾。
丸山:
工事は88年から開始。
森北:
運用・ゲ−ト閉止は95年7月から。
丸山:
93年・94年は堰はあった。工事をしていて自然の状態ではなかった。 忠節橋で鮎の遡上数を数えるとき、川幅全部を調べるのか。
原 :
川幅全体を数えたり、一部を数えて補正換算したり、時間を換算したりする。基本的には、ボ−トと白色ビニ−ル(おどし=鮎が嫌う)を川幅全体に順に配置し、白色ビニ−ルの無いところだけを鮎が通過するとして、目視で数える。
会場:
下流で放流している鮎も数えるのか。
原 :
これまでどおり、放流鮎も含めて数えている。下流漁協の放流量はだいたい50万尾。
会場:
今の鮎の漁獲量は。
原 :
92年以前は多いときで1,000トン。体重を1尾60gとすれば1,000トンは1,700万尾。93年は冷夏で600トン。94年は渇水でもっと少なくなり95年はさらに落ちる。KST当時は460万尾で230トン。放流量は50〜60トン1尾5gぐらい。
丸山:
60年頃の数倍もとれるという実感はない。(会場に尋ねてみて)その逆だ。
天野:
KSTでは遡上のピ−クで数えていない。鮎が縄張りを持ったあたりで計測している。94年は、5月19〜21日の3日間ゲ−トを閉じて、後は開放している。同じ条件でないデ−タを建設省官僚は比較しており、トリックのかたまりだ。そんな広報を全戸に配付している。釣り師の実感は全く違う。
松山:
歩いて回ったり舟でいったり解禁前から川を見に行っているが、今年は川がメチャメチャだ。今年は5月後半から6月初めになっても、解禁前であっても鮎が全くいない。いつもの石に天然鮎が今年は全くいない。例年であれば、解禁前は鮎がウジャウジャしていて、川を歩くと”鮎が散る”状態だ。去年よりもっと悪い。去年はまだいた。
いつもであれば、解禁日には4時ころから100gぐらいの大きいものが釣れる。大きいのから順に釣れる。7時ころには60gぐらいのになり、8時くらいまで釣れる。ところが、5年くらい前からだんだん減ってきた。工事の影響だ。セメントのアクやいろいろで川を汚している。昨年はまだいたが今年は全くいない。
毎年7月20日すぎに、会社にいる100名程の組合員らで魚釣り大会をやっている。例年だと1位は20数匹、あと10数匹がズラズラ、ボ−ズは4分の1。今年は1位は15匹、私は11匹で4位、10匹以上が5名で半分以上がゼロ。今年は全くいない。
6月25日と26日にゲ−トを上げた今年は、7月中旬に鮎遡上の情報が入り、8月になって大小まざって釣れだして、9月に網で捕れるようになった。川漁師は惨々だ。例年40〜50匹釣っていたのが今年は10匹釣れたらいいところ。商売にならない。
私のことを言えば、たとえば6年前は年に960匹釣っていた。1日60から80匹だ。今年は鮎8匹とかだ。ウグイが釣れる。ウグイが鮎の縄張りに入っている。皆がそう言っている。今年は去年の倍という建設省官僚の言い分は信じれない。
丸山:
遡上数は500万。1尾5gとして25トン。放流が50トン。これでは全く足らない。実際に釣れない。多摩川は100万尾、その僅か4〜5倍では長良川の釣りは期待できない。今までは釣っても釣ってもまだ釣れた。今年は1日釣ると終わり、当分釣れない。
デ−タはきちんと比較しないとダメ。条件を合わせて比較すべきだ。まともなデ−タもないモニタリング委員会が機能しているとは言えない。たとえば、今年の鮎は全国的に増えているのに、木曽川のデ−タだけはなぜか少ない。科学的という数字に疑問を感じる。
田尻:
今年の郡上は職漁師の生活が成り立たない。最低の年だ。今日のこの会場には、本当に釣りの好きな一番の被害者は来てないだろう。郡上の釣り人は自己を表現しないおとなしい人たちだ。そういう人の代弁をしたい。昔のように鮎の遡上する長良川に戻してほしい。胸が詰まる思いだ。
会場:
白鳥から来た。「銭もらったでしゃ−ない」という人もいるが、建設省官僚が何と言おうと実際に捕れないのだ。今日出席の建設省・水公団の方の中で釣りをするのは2名。友釣りですね。糸は何を使いますか。
原 :
勤務のかたわらの、盆の3日ぐらい釣るぐらい。シロ−ト程度の釣り師です。
会場:
鮎の気持ちのわかる建設省官僚になってほしい。6月初めに釣った鮎が今、水槽で熱帯魚の餌で生きている。本来は、鮎を飼うには川の石が必要だった。                                       

サツキマス激減を隠すため、 建設省官僚が養殖サツキマスを密かに放流!

会場:
白鳥・高鷲で、ある朝突然サツキマスの郡団が出現した。誰かがこっそり夜に入れたのだ。宮内庁の知人がいるが、水資源公団から洩れた話だとして、1,200〜1,300万円の金が流れて夜に魚を入れたこと、どこから持ってきたかも話した。
吉田川でシロ−トがサツキマスを30匹釣るなどしている。20数年釣りをしているが、サツキマスがあんなに釣れるのはおかしい。今年は異常にサツキマスが多かった。今年のサツキマスは、放流しすぎたサツキマスだ。鮎がサツキマスに追われている。サツキマスを入れるのはブラックバスと同じだ。来年はサツキマスをあんなに入れるな。
松山:
今発言のあった会場の人には今日初めて会った。同じことを言おうと思っていた。サツキマスは美濃で釣れて、次に美並村で釣れて、そして八幡で釣れるというのが例年の姿だ。今年は全く釣れずにいて、ある日突然、郡上八幡で37尾釣れた。これは、新聞報道の裏合わせで建設省の官僚がやったなと思った。とにかく、35〜40cmのものがポンポン簡単に釣り上げれるのだ。例年であれば、25cmのものが糸を切ってしまったりぐいぐいもっていって簡単には上がらない。それが、今年は40cmのやつが簡単に上がる。突然放流された、泳ぐ力も何もないやつであることは明白だ。6月のある夜、こっそり放流されたのだ。今年釣ったサツキマスの写真を見せるが、尾ヒレの形といい鱗がゴロゴロ取れることといい、川を遡上してきたサツキマスでないことは明らかだ。
森北:
建設省官僚がそんなことをするはずがない。
天野:
サツキマスは絶滅危惧種。建設省官僚が放流してないとしても大問題。長良川ではサツキマスがサツキマスでなくなってしまい、本物のサツキマスが絶滅に近いということになる。残留型の川鱒もこんなにゴロゴロ鱗は取れない。恩田さんの言葉だから本当だ。長良川ではサツキマスが絶滅してしまった。
森北:
松山さんの言うようなことは建設省官僚はしていない。
原 :
あんなサツキマスは手に入らない。
会場:
知らなかった、聞いてなかったということで、本日出席のあなた方には責任は無いということでよいのではないか。どこからどのように入手したかは、天野さんか田尻さんに後で説明する。
天野:
今、話を聞きたい。2,000万円という話も出ている。
会場:
1,200万円。
天野:
1,200万円という話も出ている。今、この会場で話してください。
会場:
誰から聞いたということを話すのはまずい。事実は建設省官僚が自分で調べればよい。森北さん(河川調査官)の言うことはまるでおかしい、話にならない。事実を教えてくれた人がいるのだ。私たちの税金を使って裏でやった人物がいる。
森北:
具体的に話せ。きちんと調べる。
会場:
全部ばらしても(明らかにしても)よいが、後で田尻さんに話すことにする。

サツキマス・アマゴなどの実態は不明
  現場に来ないモニタリング委員など
    事後承諾委員にすぎない

原 :
サツキマスは38km地点で調査。いつもは5月に遡上するが、96年は6月に入って少しとれた。95年は4月5月に雨が多く水量が多かった。96年は4月5月に雨が少なく、6月になって少し流量が増えた。それにさそわれて少し遅れて遡上したということも考えれる。
丸山:
スモルトアマゴを公団が1万尾、漁協が1万8000尾、合計2万8000尾を放流している。そして堰下流で捕獲したのは280尾。1%にしかならないが降海型として正常な値か。
原 :
95年12月に1ヵ月ぐらい、堰左岸側の2門で調査して280尾。建設省は16km地点で5,000尾、45km地点で5,000尾、合計1万尾の標識付きを放流した。そして、12月2日から30日の間に捕獲した280尾のうち標識ありは1割の26尾、標識無しは254尾。漁協は堰直下流で1万尾放流している。ともあれ1万尾に対して12月1ヵ月間に2門の堰柱間で26尾ということ。全体像はつかめていない。
96年に戻ってきた数については、38km地点で捕った950尾のうち標識付きは72尾。そのうち、16km地点で放流したものが29尾で0.58%,漁協が堰下流で放流したものが37尾で0.37%。堰上流で放流したものも帰っている。
丸山:
日本から北洋まで行く鮭が3年後に帰ってくるのが1%。堰では7〜8割捕れてあたりまえ。2.8%はいかにも少ない。いろんな検討をして全体をおさえるような調査が必要。次はそんな調査が必要。
モニタリング委員はなぜ現場に来ないのか。解禁のとき鮎が釣れなくて胃が痛む思いをしているというのに、調査会社の調査に任せきり。何ヵ月も後になってデ−タだけ見て判断する。そのとき鮎のシ−ズンは終わっている。そんなのはモニタリング委員ではない。事後承諾委員会でしかない。私たちは現場に行く。
原 :
現場に行っている人もいる。
天野:
建設省官僚と協力して、養殖アマゴ・養殖鮎を作る研究をしている人物だ。養殖と混同してもらっては困る。天然の鮎・サツキマスを問題にしている。サツキマスの生態は最近ようやく解かり始めたところで、研究もできていない。実態も解からないうちに絶滅に追いやっていることが問題なのだ。
服部:
おとり漁やっているが、昨年より今年は悪くなっている。モニタリング委員は現状を見に来てほしい。納得のいく調査をしてほしい。

ヘドロ・シジミ・葦原はメチャメチャ
    建設省官僚の行う調査・報告は
      ゴマカシであり詐欺師と同じだ

山内:
堰下流のシルト化は顕著でないとの建設省官僚の見解はゴマカシだ。調査を、堰直下流・3km地点・河口の3点でしかやっておらず、調査地点が少なすぎる。ヘドロが堆積しているのは堰下流から3km地点まで。同じ3km地点でもヘドロのあまり堆積していなところで建設省官僚は調査している。先日、その間で30地点を調査したが、ヘドロがもの凄い。ほとんどヘドロでシジミは皆無。
赤須賀漁協のシジミ漁獲量が変わらないのはそのとおり。これまでも漁獲制限量の範囲でしか捕っていないし、今は(シジミの捕れない)長良川でなくイビ川で制限まで捕っているから変わらない。建設省が全戸配付したチラシには、堰上流のシジミ漁の舟があり、堰下流の人工干潟で漁をしている。シジミ漁に影響がないと普通の人は思う。実際は上流ではシジミは死滅し、下流ではシジミの捕れるのは人工干潟だけ。そこだって砂が川床に戻って無くなってしまってダメになる。建設省のチラシは全体としてゴマカシでありトリックだ。間違って理解してしまう。
葦原について建設省官僚は一部がなくなると説明してきたが、水深1m以上のところはダメになっている。もう少し浅いところも来年はダメになるだろう。葦原がなくなると水草・藻類が大量発生し、ブラックバスの絶好のすみかとなる。いずれ鮎に影響が出る。高垣:シジミは30地点ぐらいでモニタリング調査している。どこで捕れたかも含めて漁獲量は詳しく調査している。堰閉止後も堰上流で捕れている。
天野:
堰上流に自らまいたものを赤須賀漁協は捕っているだけ。上流では産卵はできず、いずれ死滅する。デ−タを読み間違いしやすいようにチラシが作られている。下流のヘドロ化は急速に進み、今はもうシジミはいない。先日、岩垂環境庁長官が調査したときも1匹のシジミもいなかった。山内先生と30ヵ所調査したときもシジミはいなかった。ヘドロばかり。
丸山:
95年のカジカ・アユカケのデ−タが少しおかしい。魚道ではアユカケはカジカの半分なのに、46km地点ではカジカ27,500に対してアユカケ40。比率が激変している。
原 :
96年の調査では、カジカは堰の上下流で最大1日4,000尾、46km地点では7,000尾の日もある。上流にもカジカは上っている。
丸山:
カジカ・アユカケの調査はいつからか。堰工事の前からやっているのか。
原 :
91年から調査している。数は増えたり減ったり。アユカケは少ない。
溝口:
ヘドロ調査は3地点の他、いろいろやっている。96年9月から新しい調査を始めた。堰下流の5.4.4.4km地点で、船からビ−ズを撒いて堆積を見るもの。9月6日と7日に撒いて9月27日に採取・調査したが、表面にビ−ズがあり堆積はない。
丸山:
河口でヘドロが堆積するのはいつか。季節は。
溝口:
川の流量とか出水とかで変動する。
丸山:
教科書読んで勉強しろ。
森北:
有機物・ヘドロはたまっていない。
丸山:
夏から秋の初めの水温の高いときはヘドロは増えない。有機物は積もったものがそのまま残るのではなく、分解された量との差だ。夏から秋の初めは分解の方が速いので普通は堆積しない。それぐらいは考えて実験せよ。
かつての大本営発表と同様に、情報操作で国民が誤解するように仕向けている。                                       

釣り人アンケ−ト 釣れない原因は河口堰、ゲ−トを開放せよ

松山:
釣り人にアンケ−トをお願いした結果、94%の人が余り釣れない/全く釣れないと回答した。釣れない原因は河口堰の影響というのが1位で86%。対策としてどうすればよいかという質問に対し、春の鮎遡上時と秋の仔魚降下時に、鮎が通過できるようゲ−トを開放せよというのが1位で64%。次は河口堰を撤去せよというもの。梶原拓岐阜県知事が先回の知事選時に社会党や自治労に推薦を頼み、「河口堰のゲ−トは私の政治生命にかけて降ろさない」と約束したのに守らなかった。それに対する意見を求めたところ、政治家はそういう人が多いですね、約束通り政治生命を断ってもらおうという意見が寄せられた。
おとり屋さんは死活問題だ。生活のかかった人がゲ−ト開放を要求している。
調査などに費やす金とエネルギ−=予算と労力を、川を守る森のために使え。何十年も前の計画をムリヤリ続けるという金と労力を、次の世代に川と自然を残すために使え。                                       

おわりに:政治は変わってきている
  建設省官僚は今までのことを反省せよ

天野:
建設省の環境政策大綱の最初に、美しい自然を作っていくとある。どこまでも物を作りたいのだなあ。建設省官僚は今までのことを反省せよ。選挙に際しての9党へのアンケ−トで、自民党以外は全て、長良川河口堰の運用を見直せと回答。政治は変わってきている。
モニタリング委員会について、1)委員を追加すること、2)審議を公開すること、の2点を今日提案した。
長良川中央漁協の庄司さんから話のあったとおり、中央漁協の総代の70名が、ゲ−ト開放を建設省に要求することを漁協に求め署名した。中央漁協の意思は運用見直しである。補償協定書の約束は、漁業に関係する魚道・その他施設の機能に異常を生じた場合は、建設省・水資源公団は誠意をもって解決するものとするというものである。
郡上漁協は白紙委任状で知らぬ間に訴訟を取り下げられた。組合員が堰建設に納得した訳ではない。中央漁協に続いて郡上漁協も新たな動きを作れ。高鷲・白鳥・大和もがんばって建設省官僚と対抗せよ。生きている科学を訴えよ。
森北:
環境政策大綱を受けて、95年3月今後の河川環境のあり方を答申。建設省も環境を含めていろいろ努力している。
泊 :
モニタリング委員会について補足する。94年6月9日の天野さんからのオブザ−バ−出席要求に対し、調査委員会で議論し、委員の意見として従来通りの運営とすると、6月27日に天野さんへ回答している。
丸山:
モニタリング委員にも、この場に何人か出てきてほしい。議論が進むはずだ。
天野:
建設省官僚への本日の申し入れを再度確認しておく。一つはモニタリング委員の追加、二つ目は委員会の公開。建設省官僚の発する情報を普通はトリックという。知らない人は誤解し騙される。
「アメリカは何故ダム開発をやめたのか」という本を読んでほしい。
庄司:
天然鮎を返せ。

以上


ホームへ戻る 調査報告・資料 これまでのイベント