「ダムと日本」 天野礼子著(岩波新書) 


長良川のダム反対運動の経過や日本各地の河川の現状、世界の河川開発の潮流、河川行政の転換を求める行動などの裏表がわかりやすく書かれています。日本の川の現状を憂えている人にぜひ読んでいただきたいと思います。 今注目の田中長野県知事の「脱ダム宣言」の背景もわかる、タイムリーな一冊。

「治水」「利水」の名の下に、日本列島中の川を縊って建設されてきた2700のダム。今やまったく不要になったにもかかわらず、建設計画はまだ50以上もある。土建国家ニッポンの政・官・財癒着システムが、"川の国"の川を殺してきた。世界の潮流からはるかに遅れ、一向に見直されない公共事業に、いま市民たちがNO!の声をあげ始めている。日本各地の河川、欧米現地からの熱いメッセージ!

天野礼子 談
「ダムと日本」(岩波新書刊) 2月20日発売(田中康夫長野県知事の「脱ダム宣言」発表と同じ日という不思議・・・・)
ダムを中心として我国がなぜ土建国家として成長してきたかを表わしました。
 私が13年間かかわってきた長良川河口堰問題は、その象徴として書きこみましたが、日本で一番新しいダム現地の事例や、欧米の河川事情の最新情報、かれらの国の河川開発の歴史も、日本とからめながら書き進めました。
  今のところ、河川局からも、河川工学者からも苦情は届いておりませんが、最後のページに載せた竹村公太郎河川局長への「川を救う委員会」の提案にいまだにお返事がいただけていないのが残念です。

  〈目次〉

・ はじめに

・ 第1章 日本の風土と河川
一 日本は「川の国」
二 川をめぐる人々の暮らし
三 近代河川工法の移入
四 近代ダムの登場

・ 第2章 ダムの功罪―これまでのダムを検証する
一 水力発電が電気を造った
二 "大型ダム時代"の到来
三 利水としてのダム
四 近代河川工法とダムによる治水
五 漁業組合とダム建設
六 室原老と「蜂の巣城」の闘い
七 ダム建設と住民
八 川をめぐる生態系

・ 第3章 新しいダム反対運動の幕開け
一 最後の自然河川を守れ
二 長良川河口堰建設計画の経緯と歴史
三 "長良川NGO"の手法が全国に広まっていった
四 「公共事業チェック機構を実現する議員の会」の誕生
五 長良川河口堰の運用

・ 第4章 世界の河川開発の潮流
一 高橋裕さんの言葉
二 アメリカで学んだこと
三 "三途の川"からの生還
四 "世界の潮流"を教えた国際会議

・ 第5章 「河川行政の転換」から公共事業見直しまで
一 「河川法改訂」と「公共事業コントロール法案」提出
二 「公共事業チェックを求めるNGOの会」の成立
三 「時のアセス」と千歳川放水路事業の解決
四 国土交通省と「21世紀環境委員会」の誕生
五 地方財政の破綻
六 ヨーロッパで学んだこと
七 "亀井委員会"と"鳩山委員会"
八 ダム反対知事の誕生
九 国際シンポジウム「21世紀の公共事業のあり方を求めて」と建設省の大変身
十 川辺川に見える建設省のあせり
十一日本初のダム撤去なるか
十二河川局長への手紙

・ おわりに−二一世紀は川をどうするのか

              
2001年2月20日刊行 
700円           


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