「"自然再生事業"と公共事業改革に対する市民意見集約のための緊急勉強会」議事録要約

2002年9月16日(月)PM2:00〜6:00 総評会館にて
 出席者 NGO関係者、研究者、報道関係者等 61名




(1) 天野さんから自然再生法案に関する背景説明(参考資料)。
(2) 天野さんが内外の「市民事業」や自然再生事業をスライドで紹介。
(3) 五十嵐さんから「市民事業」法についての解説(参考資料)。
(4) 五十嵐さんが自然再生法案の与党案と民主党案について解説(参考資料)。
(5) 「自然再生法案」と「市民事業」について出席者の意見を聞いた。
「"自然再生事業"と公共事業改革に対する市民意見集約のための緊急勉強会」議事録要約


・ 自然再生法案を個々の事業に当てはめて考えるといろいろと問題点がある。
・ 再生より現在進行中の事業を止めることを優先したい。
・ 住民投票を活用しやすくする。
・ 都市再生法への対応は皆で判断することだが、都市再生法そのものは最悪。
・ 無駄な事業を止めるには、サンセット法案などの中止した場合の法案つくりが必要。
・ 再生の名のもとに破壊が行われるのでは。
・ 環境大臣に大きな発言権を。
・ 主体は国なのか県なのか市町村なのかはっきりしない。
・ 法案の冒頭で国土のあるべき姿をしっかりと示すべき。
・ 「市民事業」を「民安事業」としてはどうか。
・ 自然再生法案は有明海再生特措法の全国版であやしい。
・ 環境評価委員会に御用学者が入らないような人選をすべき。
・ 現地のNGOで、きちんと反対意見の言える団体を参加させる。
・ 実際に法律を運用する際に、自治体職員の能力の問題や、地方議員の資質の問題や事業を中止したときの処理の問題などがある。
・ 民主党の体制に不安がある。
・ この自然再生法案がゼネコンに利用されないか心配である。
・ 今の日本には数10兆円もの事業をやる余裕がないということを、「市民事業」のアイディアと共に広める必要がある。
・ 公共事業の決定権をいかにして市民に取り戻すか。
・ 公共事業コントロール法を成立させる。最初から機能しないかもしれないが、やってみてだめなら議員を落選させることはできる。
・ 地方の現場では反対運動が寄って立つ法律が必要なのでこの自然再生法案に期待している人もいるので問題。
・ この法案がうまく活用できている状況がイメージできない。
・ 法案に沿って実際のケースをシミュレーションしてみるといろんな問題点が確認できるはず。それをもとにこの法案はだめとアピールし、私たちが提案する法案を作る。
・ 市民派の学者リストが欲しい。
・ 行政の中身が変わっていないのに自然再生を任せるのは危険。
・ 私たちの対案はこれからみんなで考えていくしかないが、長野県はよい実験となる。

●諫早湾NGO(東京)が諫早再生について考えてきたこと。
1 反省から出発
有明海異変の大半は人為的な環境破壊の結果であると率直に認めて、真摯な反省をすることから出発する。この反省なくして有明海の再生はあり得ません。中でも最も問われるのは公共事業の在り方です。諫干をはじめ原因として想定される開発行為への反省、これまで対症療法的に行われてきた各種事業の検証、その他人間社会が環境に及ぼした影響を検証し反省することから有明海の再生は始まります。

2 徹底的な原因究明
異変をもたらした各種要因やメカニズムの科学的究明を行う。有明海異変の原因究明と対策の提言を使命としたノリ第三者委の見解は最大限尊重されなければなりません。また、このノリ第三者委の機能を充実・発展させるとともに、新たに「有明海総合水産試験場」(仮名)のような総合的な調査・研究施設を設置するなど、調査・研究体制の整備も必要です。

3 再生目標の明確化
人為的要因をすべて完全に取り払うことは不可能なので、どの状態まで再生するのかその目標を定める。少なくとも有明海沿岸の漁業者が、安定的な漁家経営が可能になり、地域経済が自立できるよう目標を定めるべきです。

4 再生計画の樹立
原因究明から得られた結果に基づき、有効な立法措置も含めて、目標に応じた有明海再生計画を策定する。海域全体を総合的・広域的に把えた強制力のある管理計画であることが重要であり、個別的な事業の実施はすべてこれに従って行います。また、事態の緊急性に鑑み、予防原則の見地から、想定される要因に素早く対応することも必要です。

5 実施体制の確立(実施主体の一元化)
前項に示した管理計画の策定及び実施に責任と権限を有する一元的に管理できる組織体制を設置する。各省庁や関係県が個々ばらばらに対応したのでは、要因に適切に対応できないばかりか、結果的に無秩序な開発に繋がりかねません。こうした縦割り行政の弊害をなくし、全体的な整合性を図る必要があることから、強制力のある実施主体の一元化が望まれます。特に、国の公共事業や施策が異変の大きな要因として問われていることからも、これらに対応できる実施体制の確立が必要です。

6 公開と参加の原則
ただしこの実施主体の権限は強大になり過ぎる恐れがあります。そこで、実施主体の確立及び運営は、徹底した国民コントロールのもと、情報の公開と市民参加の原則に基づいてなされなければなりません。実施主体に漁民などの地域住民やNGOが参加することも不可欠です。


●日本湿地ネットワークの「自然再生推進法案」への意見のまとめ
1. 今回の自然再生法案は直ちに廃案にすべきである。
2. 湿地保全政策に関しては、ラムサール条約や生物多様性条約の理念にのっとって進める。
3. 自然再生を口実にした新たな開発が行われる、既存の開発事業が止まらないため再生が実現しない、住民参加のあり方に問題がある、「公益」との調整のためあるべき再生が実現しない、など多くの問題があり、今回の法案はこれを是正するどころか、固定・助長してしまう恐れがある。
4. 法律の制定は、こうした現状への反省と、自然環境の保全を他の公益との関係で最優先することを出発点とすべきである
5. この11月に、ラムサール条約バレンシア会議で検討される「湿地復元の原則と指針」決議を待ち、それが示す国際的基準に従って考えるべきである。
6. 湿地保全の法制度全体が同時に見直されなければならず、ラムサール条約ですでに決議されている、「湿地保全に関する法制度全体の見直し」決議に従って早急にとりくむ必要がある。なお、公有水面埋立法については、湿地破壊型乱開発の元凶となってきたものであるから、早急に廃止すべきである。
7. 「多様な主体による参画」が、「自然再生推進法」案の一つの目玉であったが、市民参加という言葉で、目指すことには逆行している事例も多い。
8. 成功事例の要因は「NGO・市民の主導」にあることが重視されるべきであり、自然環境の保全再生に関する抜本的法制度の改革を、NGO・市民主導の仕組みによって進められるべきである。


今後のスケジュールについて

1. 9月24日または25日に、与党の「自然再生推進法案」を廃案させる努力をして欲しいと、民主党新代表へ申し入れ。
2. 市民案の起草
 ・自然再生法案を安易につくらせない。
 ・与党も野党も、市民派との協議のテーブルを設けるべき。
 ・私たちの意見の集約。
3. まず野党とのテーブルを作る。
4. 与党にも同様な申し入れをする。
5. 「市民事業法案」を野党とともに作る。

起草委員  陣内(諫早)、辻(JAWAN)、粕谷(長良川)、泉田(黒部川)。

以上。


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